レイコとシンジ-ループ-後編- 6
グイッと二人の髪を掴んで顔を引きずり上げ、玲子は尋ねた。「どうなの二人とも?3年生のトイレにも忍び込んだこと、あるんじゃないの?正直に白状しなさい!」ち、ちがうううううっ!そんな、そんなのでたらめだあああああっ!と慎治たちは大声で叫ぼうとした。だが、グッと玲子の手に力がこもった。ヒッ、ヒイイイイッ、違うなんて言ったら・・・後で死ぬほど鞭で叩かれる・・・玲子さんたちの鞭よりは・・・ここでやられた方がまだマシだあああっ!玲子たちの鞭への恐怖に、慎治たちの惰弱な精神はいとも簡単に屈服してしまった。「ハ、ハイッ・・・忍び・・・込みました・・・」「そうで、す・・・覗き・・・ました・・・」ザワザワ、と教室中がざわめく。殆ど顔も知らない一年生、自分と関係ない他人が覗かれたのではない、自分たちも覗かれていた。しかも学校で、覗かれる心配など全くないと思っていた場所で。日常に突如悪夢が侵入してきたような何ともいえない違和感、不快感だった。生理的な、妙に生々しい嫌悪感がジワッと全身に、憎悪と共に浸み込む。「嘘でしょう・・・」思わず呻くようにもらす美幸に玲子が追い討ちをかける。「それだけじゃありませんけど。慎治、あなた中学の時、ヤンキー系の先輩に苛められそうになった時に庇ってくれた女の子を、何を間違ったか自分を好きなんだ、僕を守ってくれる女騎士なんだ、と思い込んじゃって、ストーカーしてたそうじゃない?聞いたわよ?」そ、そんな嘘だあああああっ!だがそこで絶妙のタイミングで美里が口を挟んだ。「ああその話なら慎治自身も言ってたわね。中学の時に先輩に必死でアタックしてたんですって。なんか半年近くもずっと追っかけて、電話じゃ切られるからって自宅前でずっと待ち伏せしたり行く先々に先回りしたりして、必死でアタックしてたんです、で言ってたわね。そしたらしまいに、ストーカーに間違われて補導されそうになっちゃたんですよお、て冗談めかして言ってたけど、何だあれ冗談じゃなくて、本物のストーカーやってたんだ!」ゾクゾクっと美幸の背中に悪寒が走る。その表情の変化を玲子は見逃さなかった。クスクス、と笑いながら玲子は言い放った。
「まあ鞭は可哀想、ていう先輩の気持ちはよく分かるんですけど。でも慎治たちの精神構造だったら、この先輩は僕を守ってくれた、僕を守ってくれる女騎士なんだ、きっと僕のことが好きに違いない、そうだ、そうに違いない、ここで出会う運命だったんだ!と思い込んでストーカー再発しちゃいそうですね。ま、私には関係ない話ですけど。だって付き纏われるのは私じゃなくて、先輩なんですから。」ゲエエッ、と美幸の顔を嫌悪と恐怖が支配する。「ちょ、ちょっと待ってよ、冗談じゃないわ、ストーカーされるのなんて真っ平よ!」そうそう、そうですよね。大きく頷きながら玲子は言った。「そうですよね、私も真っ平です。でも、だったらどうやって自分の身を守りますか?言っときますけど、慎治たちみたいなストーカー連中に言葉は無意味ですよ。通じるのはただ一つ、恐怖と苦痛だけです。舞先生が言っていらっしゃいましたが、こうやって慎治たちを連れまわして全校生徒に鞭打たせるのは、単に懲罰じゃないそうです。懲罰と言うよりむしろ、予防だ、て言っていらっしゃいました。」「予防?どういうこと?」「簡単ですよ。慎治たちに鞭の痛みと恐怖を浸み込ませるんです。聖華の全生徒、誰に対しても覗きやストーカーができないように、そんなことをやろうとしたらお尻が鞭の痛さを思い出して、全身恐怖に震えてしまうようにするんだ、て仰っていました。荒療治ですけど、正しい選択だと思いますよ?だから私も慎治たちに鞭を加えました。私を覗いたりストーカーしないようにね。でもまあ」クスリと笑いながら玲子は止めを刺した。「さっき言った通り、困るのは先輩、別に私は痛くも痒くも何ともないですから。余計なこと言ってすみません、嫌な思いをするのは先輩なんですから、私には関係ない話でしたね、どうぞご自由にしてください。」
ここまで言われて慎治を許す女子生徒がいる訳がない。覗き、ストーカー・・・話には聞いていたがそれが自分たちの身に降りかかるかも知れない、それは生理的、本能的とも言えるほどの恐怖だった。そして鞭打ちも既に犯してしまった罪への懲罰、過去への罰なら許すことも有り得よう。だが自分の未来への保険、自分の安全への予防としてなら、許すことなど有り得よう筈がない。選択肢は唯一つ、鞭だけだ。ギュウウッ・・・音がしそうな程固く、美幸は鞭を握り締めた。「・・・冗談じゃ・・・ないわ・・・」低い、震える声で美幸は呟いた。「そうよね、あなたにとっては他人事よね、だけど・・・私にとっては自分のことよ!そんなの絶対イヤ!ちょっと、さっきの一回、あれ取り消していい?ちゃんと打ち直す!こいつらが私を絶対襲わないように、二度と近づきたくない、て思うくらい引っ叩かなくちゃダメ!」よしよし、その調子ですよ先輩!単純といえば単純、素直といえば素直、そして当然と言えば当然な美幸の反応を満面の笑みで歓迎しながら玲子は明るく言った。「そうですよね、自分の身は自分で守らなくちゃいけないですよね!勿論OKです、思いっきり痛い鞭でやり直してください!」な、な、ななななな、なんでえええええっ!悪夢のような展開、想像を絶する玲子の奸智に慎治たちは呆然としながら涙を流していた。だが悠長に泣いている暇はない。半ばパニック状態の美幸は、悪鬼のような形相で鞭を振り上げるや否や力任せに振り下ろした。バジイイイイインッ、アヒイイイイイイッ!ビシイイイイイッ、イダイイイイイッ!武道の経験もなく特に運動神経が良い訳でもない美幸だ、力任せと言っても腰が入らないへっぴり腰、スイングもバラバラだがそれでも慎治たちに激痛を与えるには十二分だった。素人だろうがへっぴり腰の手打ちだろうが、人間の体はCANEのフルスイングに耐えられるようにはできていないのだ。ハアハアハア・・・二人を計四発、全力で鞭打った美幸は荒い息を吐きながら次のクラスメートに鞭を渡し、席に戻った。後は・・・全員躊躇うことのない、フルスイングの鞭地獄だった。
ヒョオッ、ヒュンッ、ビュオッ、ブンッ・・・バシイイインッ、ビシイイイッ、バシイイイッ、バンンンンンッ・・・鞭の轟音の中、慎治たちの絶叫が間断なく響いた。手加減抜き、強弱の波すらない全力でのCANEの連打。玲子たちが鞭打つ時ですら、単に苦痛を長引かせるためとは言え多少の強弱のリズムはある。だが今は全員、たった二発ずつしかない鞭に自分の身の安全が懸かっているのだ、手加減など在ろう筈がない。全身全霊の力を込めた鞭の連打、余りの激痛に慎治たちは恥も外聞もなく、凄絶な悲鳴を上げ続けた。慎治たちの絶叫、鞭打たれるものの必死の絶叫は、玲子以外の誰もが生まれて初めて聞く断末魔の叫びだった。だが幾ら慎治たちが絶叫しても、許すはおろか僅かばかりの手加減をしてやろうという者さえ皆無だった。自分の身は自分で守る、この変態たちに付き纏われるのは死んでもイヤ!全員の共通認識だった。そして獣のような慎治たちの絶叫、人間のものとは思えぬほどの絶叫はむしろ、慎治たちの非人間性、けだものの正体暴露、としか思えなかった。その叫びを掻き消すかのように、恐怖を打ち払おうとするかのように、鞭はますます激しさを増し、全力で打ち振られ続けた。
漸く全員が鞭を打ち終えた時、慎治たちの尻は真っ赤を通り越して青黒い痣に覆い尽くされ、その上に幾重にものた打ち回る蛇のように太い蚯蚓腫れが積み重なっていた。平面の尻が複雑な形状のオブジェのように変形していた。フフフ慎治、結構いい形になったじゃない。記念撮影でもしときたいところね。玲子が満足げに冷笑を浮かべながら拘束を解くと、精根尽き果てた慎治たちはどさっと床に転げ落ちた。最早動く気力すらない。うう、ううう・・・激痛に涙を流しながら、慎治は震える手を必死で伸ばして尻を押さえた。あああ、漸く手を当てられた。ヌルッと血の感触と奇妙なほどの隆起、そして自分の尻とは到底思えない、まるで煎餅か何かのように固くなった感触があった。あああ・・・ひ、酷い・・・こんなに・・・なるまで・・・叩くなんて・・・だが悠長に痛みを味わう余裕すらない。天上から残酷な女神の声が降り注ぐ。「慎治、いつまでも寝ているんじゃないわよ!さっさと土下座して、皆さんにお礼を言いなさい!」鞭のように厳しい玲子の声に蹴り動かされたように、二人はボロボロの肉体を必死で引きずり起し、全員に向かって土下座した。「あ、あ・・・ありがとう・・・ござい・・・ました・・・」「む、むちを・・・ありがとう・・・ござい・・・ました・・・」自分を半死半生の目に合わせた40人の上級生の前で、尻を丸出しにしながら土下座する屈辱。鞭打たれてお礼まで言わされる屈辱。無実の罪で二度と消えることのない汚名を着せられ、一生忘れられない程の苦痛を味合わされた屈辱。くくく・・・死んだ方がましだ・・・涙を流しながら震える慎治たちに、玲子は更に追い討ちを掛けた。「皆さん、ありがとうございました。じゃあ慎治、慎治は前、慎治は後ろのドアの横で正座しなさい。そしてお帰りになる先輩たち一人一人に土下座してお礼を言いながらお見送りしなさい!」そ、そこまで・・・やらせるのか・・・慎治は涙に曇った目で玲子を睨み付けようとした。だが見下ろす玲子の視線とクロスした瞬間、慎治の情けない抵抗の意志など木っ端微塵に砕け散る。
のろのろと二人がボロボロの体を引き摺ってドアの横に土下座した時、漸く霜月が解散の号令を掛けた。「・・・じゃあ皆さん、今日はこれまで、さようなら。」真っ先に退室する霜月、若月に続き、三々五々と女子生徒が退室していく。覗かれていたという嫌悪、ストーカーへの恐怖、そして生まれて初めて振るった鞭の興奮、穢らわしい化け物を見るような視線を浴びながら、土下座し「ありがとうございました」「鞭をありがとうございました」と、玲子に言われるがままに礼を言い続ける二人の、不気味な迄の服従。この・・・変態!ペッとある生徒が通り過ぎながら唾を吐き掛けた。それを皮切りに、何人もの生徒が唾を吐き掛けながら帰っていく。クラスのおよそ半分、20人近くに唾を吐き掛けられ、後頭部から背中を唾塗れにされて啜り泣く慎治たちに、玲子と美里が近づいてきた。「先輩、有難うございました!おかげでほんと、上手く行きました!」「フフフ、そう、よかったわ。それにしてもほんと、玲子って口が上手いわね。美幸のことを上手くその気にさせた手口、お見事だわ。来週以降もこの調子でお願いね。」笑いながら慎治の頭を踏み躙る美里に玲子が提案した。「じゃあ先輩、部活行きましょうか。ああ慎治、あんたたち二人もここを綺麗に掃除して、拷問台を片付けたらさっさと来るのよ。分かっているわね、掃除ってどうやるのか?この前美里先輩にやらされたように、全部舌で舐めるのよ。」酷い・・・泣きそうになる慎治の頭を踏み躙りながら玲子は続けた。「そういえば先輩、何か私、おトイレ行きたくなっちゃいました。先輩もご一緒に如何ですか?フフフ、慎治をお貸ししますよ?」えっえええっ、美里先輩のおしっこまでええええっ!「あら悪いわね玲子、フフフ、じゃあ折角だから私も使ってみようかしら。人間便器・川内慎治を。」「どうぞ!思いっきり使ってください、じゃあ慎治、慎治には私のおしっこ飲ませてあげるね!」
