レイコとシンジ-STRAWBERRY FIELDS FOREVER- 2

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「そ、その・・・ぼくたちは、、、玲子さん、たちの、、、お、おし・・・・・・。おしっこを・・・の、のみ、のみ・・・ました・・・」一瞬、教室中が静まり返った。えっ、まさかね・・・。いくらなんでも、嘘でしょ・・・。そんなこと、ありえないよね・・・クラスメート全員が度肝を抜かれて仰天し、静まり返っていた。1、2分は沈黙が続いただろうか。最前列にいた富美代が沈黙に耐えかねたように立ち上がり、口を開いた。「ねえ・・・矢作・・・今、慎治が言ったこと、本当?いや、私信じられない・・・唾とか鞭とは違うもんね。飲まないで逃げるなんて、いくらでもできるじゃない?まさか、いくらなんでも、おしっこ飲んだっていうのは嘘でしょ?」慎治も泣きそうになっていた。嘘です、と言いたい。だけど・・・チラッと見ると、礼子と視線があった。慎治、本当のことを言いなさい。嘘は許さないわよ。礼子の大きな瞳がじっと慎治を見つめていた。「どうなの慎治、はっきり言ってよ!冗談なんでしょ!!」富美代の詰問が響いた。い、いわなくちゃ・・・いわなくちゃ・・・礼子さんに怒られる・・・「ほ、ほんとうです・・・の、のみました・・・礼子さんたちの・・・おしっこを・・・のみました・・・・」「きゃーっ!し、信じられないーっ!!」「う、嘘でしょっっっ!おっおしっこなんて飲めるの???」「この・・・変態!!不潔!!ヤダ、臭い息吐かないでよ!」「お願い・・・二人とも、今すぐ死んで!!!」教室中に慎治たちに対する罵声が響き渡った。「ひ、ひどいよ、みんな・・・ぼくたちだって、飲みたくなんかなかったんだよ!!!だけど、だけど、礼子さんたちが、無理やり飲めって鞭で脅かすから・・・しかたなかったんだよー!!!」慎治は思わず絶叫してしまった。金切り声に近い慎治の絶叫に一瞬、沈黙が訪れた。だが、ほんの一瞬だった。富美代は先ほど立ち上がったまま、慎治の告白を聞いて余りのショックに座れないでいた。(信じられない。おしっこを、おしっこを飲むなんて、こいつ本当に人間?それを恥ずかしげもなく告るなんて・・・)ショックは怒りへと変わりつつあった。(一応、クラスメートなんだよ?合気道部の同期なんだよ?そ、それがこんな変態と一緒だなんて・・・)「慎治、一つ聞くわ。」富美代は刺すような眼差しで慎治を睨み付けつつ尋ねた。「無理やり飲まされたから、仕方なく、て言ったわね。じゃ、聞くけど。慎治が飲んだのは一回だけなのね?」そ、それは・・・慎治は口ごもってしまった。「どうなのよ、はっきり答えなさい!!」富美代の詰問が鞭のように鋭く、教室中に響いた。「た、たくさん・・・のまされ、、、ました。。。毎日、毎日、何回も・・・飲まされ・・・ました・・・」ま、毎日毎日?何回も?飲まされた?おしっこを???グッ、、、グブッ・・・富美代はこみ上げてくる吐き気に思わずうずくまってしまった。こんな奴と子供の頃、平気で遊んでいたなんて・・・ひどい・・・慎治、なんであんたは私の子供時代を穢すのよ・・・あんまりよ!!!「富美代、大丈夫?」隣の席の朝子が慌てて背中をさすった。「ぐっ、、、ハァ、、ハァ・・・だ、だいじょうぶ・・・ごめんね、朝子・・・」「顔色悪いよ、保健室行く?」「ううん、大丈夫だから。びっくりしただけ。それより、やらなくちゃ、いけないことがあるわ・・・」

富美代は少しふらつきながら立ち上がった。口の中には胃液の混じった、酸っぱい唾が湧き出ていた。「慎治・・・変態・・・あんたの・告白・・確かに聞いたわ・・・今度は私の、、心の底からのプレゼント・・・あげる・・・」富美代は慎治を憎悪と軽蔑に燃えた眼差しで睨み付けながら全身を反らせると、一メートルほど離れたところに立っている慎治の顔めがけ、思いっきり唾を吐き掛けた。ベッ!!!ビチャッ・・・富美代が唾を吐く音と、慎治の顔に唾が引っかかる聞きなれた音が響いた。「富美代、気持ち、よく分かるよ・・・私も同じ気分。こいつ、最低・・・」ゆっくりと立ち上がると、朝子も慎治に向けて思いっきり唾を吐きかけた。「慎治、あんたに対するこの思い・・・唾を引っ掛ける位しか表現方法思いつかないのが残念よ・・・」

富美代と朝子が皮切りとなり、次々と前の方に座っていた女の子たちが立ち上がった。「私も!!!」「ああ、気色悪い・・・この変態、けだもの!!」口々に罵りながら、クラス中の女の子たちが教壇を取り囲み、唾を吐き掛けたり小突き回したりし始めた。当の玲子たちはクスクス笑いながら暫く眺めていたが、やがて立ち上がるとみんなの輪に近づいていった。「はいはいみんな、盛り上がってるとこ悪いけど、そろそろこいつらにもご飯たべさせなくちゃね!」富美代がびっくりしたように振り向いた。「礼子、こんな奴にご飯食べさせる必要なんかないでしょ?それとも・・・まさかみんなの見てる前でおしっこ飲ませる気?」「ちょっと待ってよ富美代、慎治じゃあるまいし、みんなの見てる前でおしっこなんかできるわけないでしょ!?でもね、みんなもう、慎治のこと、人間と思えなくなってるでしょ?おしっこ飲むなんて、そうねえ・・・やっぱり、豚、かな?だから豚にみんなで餌をやろう、ていうことよ。」玲子が後を引き取った。「そういうこと。私たちが慎治たちに気なんか使うわけないじゃん?要するに、みんなの前で豚なところ、曝け出させてやろうっていう趣向よ!」

そ、そんな・・・何をされるんだろう・・・慎治たちが怯えた目で見守る中、玲子は慎治の弁当箱を床に置いた。そして、片手に持っていたビニール袋を開け、何やら白い、薄汚れたトレーのようなものを取り出した。「慎治、わかる?これ、うちのワンちゃんの餌入れよ。豚用の餌入れはないから、犬に進化よ、良かったわね。」え、ま、まさか・・・慎治があっと言う間もなく玲子は慎治の弁当箱の中身をトレーに一気にあけた。「なーるほど、それで四つんばいにして食べさせる、てわけね。」「そうよねえ。慎治なんかに、私たちと同じようにお箸で、座って食べさせるなんてとんでもないわよね!」だが、玲子はチッチッと軽く声を出しながら人差し指を立て、否定した。「慌てない、慌てない。このままじゃ、単に入れ物変えただけでしょ?豚が人間と同じもの食べていいわけないじゃない。豚が食べていいのは、残飯だけよね!」言うなり玲子は右足を上げると、一気にトレーの中の食べ物を踏み躙った。ご飯が、おかずのハンバーグが、付け合せのキャベツが・・・あっと言う間に玲子の靴底に潰され、ぐちゃぐちゃの固まりに化けていった。靴底の汚れも付着し、どこか黒ずんだような色になっていった。「さあ、いいわ。慎治、食べなさい。ちゃんと四つん這いになって口だけで食べるのよ。手なんか使ったら、承知しないからね!」靴の裏の汚れをトレーの縁でこそげ落としつつ玲子が命令すると、ザッとみんなの視線が慎治に注がれた。こいつ、本当に食べる気???これ、本当に豚の餌みたいじゃない・・・横にいた朝子が慎治の足を軽く蹴った。「ほら慎治、玲子が折角食べやすくしてくれたんだよ?さっさと食べたらどーお?慎治みたいな豚にお弁当作ってくれたお母さんにも悪いでしょ?さっさと食べなよ!!」そ、そんな・・・慎治は必死で周り中に視線を動かした。誰か助けて、、、お願い、可哀相だよ、て、やめさせてよ・・・だが、そんな助けなど誰からも入るはずがなかった。慎治の告白に呆れかえっていたみんなの希望はただ一つ、慎治を更に貶めることだけだった。朝子を口火に次から次へとみんなが続いた。「そうだよ慎治、さっさと食べてよ!」「おしっこ飲むような変態には勿体無いくらいじゃない!」「ねえ、見栄なんか張ってないでさっさと豚は豚らしく、ブーブー鳴きながら食べたらいいじゃない!」みんなの声に押されるように慎治はトレーの上に顔を持って行った。だが、そこにあったのはおよそ、食べ物とは言い難い、ぐちゃぐちゃになった固まりだった。そしてその得体のしれない固まりが乗っているトレーは、どう見ても洗ってあるようには見えない、玲子の愛犬が屋外で使っていたのをそのまま持って来たに違いない代物だった。ぐえっっっっ・・・慎治は思わずそのまま凍り付いてしまった。

「ほら慎治、早く食べないと次がつかえてるんだから!」ゴリッ・・・慎治の後頭部が玲子の靴底に踏み躙られた。いや、踏み潰した慎治の弁当がまだ一部こびりついている玲子の靴底はズリュッというような音と感触で慎治を踏み躙った。「うえっっっっ!!」慎治はまともにトレーに顔面から突っ込んだ。慎治の顔中に潰れた弁当が押し付けられた。「やったーっ!」「ほら慎治、しっかり食べて!」はやし立てる声にあわせるかのように玲子は慎治の頭を更に踏み躙った。た、食べなくちゃ・・・食べなくちゃ・・・慎治にとってこの屈辱から一刻も早く逃れる手段は目の前にある汚らしく踏み潰された物体を胃の奥に送り込むことだけだった。べチャッ・・・ビチャッ・・・グビッ・・・頭を踏みつけられ、半ば踏み潰された状態で慎治は必死に顔を動かして次から次へと食べ続けた。口だけしか使えず、しかもトレーに強く押し付けられているため、慎治が必死で飲み込む音はどことなく豚がエサをあさる音を連想させる汚らしさだった。「わあ・・・本当に食べてる・・・」「げえ、よくこんなもん食べられるわよねー。やっぱ慎治って、本当に豚の血が混じってるんじゃない?」「言えてる言えてる!この汚い食べ方って、ほんと豚そのものよねー!」尻や足のあちこちを蹴られながら慎治は必死で食べ続けた。礼子の別荘でもこんな扱いは受けなかった。毎日が地獄のような慎治にとって、三度の食事は数少ない楽しみだったのに、その楽しみすら、屈辱に染め上げられていた。慎治はひたすら食べ続けた。泣きながら泣きながら、汚い咽び声をあげながら食べ続けた。

慎治が「食事」を始めたあたりで、富美代は胃のむかつきが我慢できなくなってきていた。「駄目、私、気持ち悪い・・・ちょっとトイレ行ってくるね。」富美代は横にいた和枝に声をかけると、ふらつくように教室から出て小走りにトイレに駆け込み、そのまま一番手前の個室のドアを荒々しく閉めた。ああ、気持ち悪い・・・慎治が、礼子のおしっこを飲んだこと自体が気持ち悪いのではなかった。富美代の脳裏を、小さいころの様々な記憶がよぎっていた。慎治とは家が近所だからしょっちゅう一緒に遊んだ仲だった。お互いの家に行ったこともよくある。親同士だって顔見知りだ。それが、、、ひどいよ、こんなのあり?目の前にいる慎治は礼子のおしっこを何度も何度も飲み干した、という富美代には全く理解できない生き物だった。私、こんな奴と一緒に遊んで、一緒の学校通って、育ったってわけ?他人のおしっこ飲んで平気でいるような変態と知ってたら、誰が一緒に遊んだりしたもんですか!まともな大人しい子のふりをして、よくもあたしたちと一緒に遊んでいられたものね・・・ふざけるんじゃないわよ・・・富美代は自分の過去までが慎治に穢されたような気がした。慎治が勝手にどん底まで落ちていくのは慎治の勝手よ。だけど、なんであたしまで巻き込むわけ?なんで、あたしがこんな嫌な気分味合わなきゃいけないのよ。冗談じゃないわよ!富美代はぞくっと全身に鳥肌が立つのを感じた。追っかけっこしたりおままごとしたり・・・普通の子供と同じように富美代と慎治は遊んでいた。お互いの体に触ったことだってしょっちゅうある。慎治があたしの部屋に入ったことだってある・・・いっしょにご飯食べたことだってある・・・全身に悪寒が走った。き、汚い・・・あんな奴と・・・口中に酸っぱい唾が溢れてきた。唾が沸く,なんてもんじゃない。口の中一面から酸っぱい,嫌な味がにじみ出ていた。ググッと胃が急激に収縮し、食べたばかりの弁当が胃から逆流してくるのを感じた。う、ぐえっ・・・もう駄目・・・「グッ、、グ、グヴェェェェ!!!」富美代は便器を覗き込むようにしながら胃の中の物を一気に吐き出した。狭い個室に吐き出したばかりのゲロの匂いが充満した。胃液の酸っぱい匂い,未だ消化されていない弁当の,何種類もの食材の入り混じった匂い。便器の中には自分が吐いたばかりの、悪臭を放つゲロが大量に飛び散っていた。き、汚い・・・匂いと映像が気持ち悪さを倍加させた。うえっ・・・く、苦しい・・・「ク゜プッ・・・ガ、ハッ・・・」第二波がこみ上げてきた。「グゲッ、、ゲヴォッッッッ!」富美代は必死で吐きつづけた。胃の中の物を全部出してしまいたかった。

第二波を吐ききったところで荒い息をついていた。口から酸っぱい、胃液混じりのよだれが垂れていた。汚い・・・ぺっと便器の中に唾を吐き捨てた。口の中がまだ酸っぱい。富美代はハアハアと肩で息をしながら、何度も何度も酸っぱい唾を吐き捨てた。ふと、両目から涙が垂れているのを感じた。最低・・・なんであたしが慎治のおかげで涙なんか流さなくちゃいけないのよ・・・なんであたしがこんなところでゲロ吐いてなくちゃいけないのよ・・・最低・・・「富美代、大丈夫?医務室行く?」ドアの向こうから和枝の声がした。あ、和枝、来てくれたんだ。ごめんね・・・吐けるものを全部吐いてしまったせいか、もう吐き気はおさまっていた。行こう・・・吐いたゲロが少し飛び散っていた。いけない、拭いとかなくちゃ。トイレットペーパーを丸めて簡単に回りを拭いた。何で、あたしがゲロの後始末なんかしてなくちゃいけないのよ。風邪引いたわけでも、飲みすぎたわけでもなんでもないのに・・・

ペーパーを捨てながら便器の中を見ると、さっき食べ終えたばかりの弁当が殆どそのままの形で吐き出されていた。ご飯粒、唐揚げのかけら、コーンの粒・・・折角お母さんが作ってくれたのに、なんであたし、こんなところで吐かなくちゃいけないのよ・・・慎治、慎治のせいよ・・・全部、あいつが悪いんだ・・・慎治、許さないよ・・・苛めてやる・・・苦しめてやる・・・酷い目にあわせてやる!!!富美代の中で慎治に対する憎悪の炎が燃え上がった。今まで確かに、富美代は礼子と一緒に慎治を散々苛めてきた。教室でも、合気道部でも。引っ叩いたことも蹴ったこともある。唾を吐き掛けたことも何回もある。だが、憎悪、という感情は余りなかった。意気地なしの慎治のことを腹の底から軽蔑してはいたが、憎い、とは思っていなかった。慎治を苛める時に楽しい、とは思っていたが、むしろ一種の遊びのような感覚すらあった。苛めていない時は別に、慎治は単なるクラスメートの一人、幼馴染の慎治のままだった。だが、今は全く違う。慎治に対して持っている感情はただ一つ、憎悪だけだった。許さないよ、慎治・・・あたしをこんな目にあわせて・・・仕返ししてやる・・・トイレに水を流すと、富美代はゆっくりとドアを開けた。心配そうに和枝が立っていた。「富美代、大丈夫?医務室で休ませてもらった方がいいんじゃない?」「ううん、大丈夫。心配かけてごめんね。もうすっきりしたから大丈夫よ。それに、やらなくちゃいけないことがあるしね。」富美代は洗面台に行き、丁寧に手を洗った。口をゆすぎ、何度も何度もうがいをした。ガラガラガラ・・・ペッ・・・喉の奥まで丁寧に洗い流した。最後に顔を冷水で洗った。冷たい水が心地よかった。気持ちいい・・・頭がすっきりする・・・手と顔をハンカチで拭き、鏡を見た。鏡の中にいる自分は顔色こそやや蒼いものの、瞳は怒りに爛々と燃えていた。髪が乱れてるわね・・・髪とついでに制服の乱れを直した。フウッ・・・よし、戦闘準備完了・・・慎治、行くわよ・・・富美代はゆっくりと和枝に微笑みかけた。「和枝、ありがとう。さ、行こう!」「うん、でも、本当に大丈夫?」「勿論よ。それより、やらなくちゃいけないことがある、ってさっき言ったでしょ?慎治に仕返ししてやらなくちゃ!和枝、手伝ってね!」フウ、良かった。どうやら大丈夫みたいね。和枝も一安心した。だけど、慎治に仕返ししたいっていう富美代の気持ちもわかる気がするな。よーし、私も今日は慎治のこと、思いっきり苛めてやる・・・和枝も腹を固めると富美代と一緒に教室に戻っていった。

ようやく食べ終わった慎治が端に正座させられると、次は慎治の番だった。「お待たせ慎治!おなか空いたでしょ?慎治のトレーもちゃんと用意してあるからね!」礼子が取り出したトレーもまた、慎治用のトレーに負けず劣らず汚いものだった。き、きたない・・・僕もあれから食べさせられるのか・・・礼子さんに踏み躙られたお弁当を・・・慎治は半ば覚悟を固めていた。く、悔しい・・・なんで、僕がこんなことを・・・でも、、、どうせ食べさせられるんだ・・・だったら・・・さっさと一気食いしてやる・・・そうすりゃ、嫌な時間が少しでも早く終るよな。。。だが礼子が慎治の弁当をトレーに空けた丁度その時、富美代が戻ってきた。ラッキー,ちょうど慎治を苛めはじめるとこだったんだ。グッドタイミングじゃん!!「ねえ礼子、悪いけど、慎治に食べさせる役、私にやらせてくれない?」富美代は礼子におねだりした。「えっ、ふみちゃん、やりたいの?うん、別にいいけど・・・大丈夫?さっき気分悪そうだったじゃない?」「そうよ、まだ顔色あんまり良くないわよ?気持ちは分かるけど、慎治を苛めるのはいつでもできるんだからさ、無理しないで休んでた方がいいんじゃない?」和枝も心配そうに続けた。「うん、ありがとう。気分はもう大丈夫。だけどさ、私、こいつがね、小さい頃とはいっても私と一緒にまともな顔して遊んでたのが許せないの。私の手でグチャグチャにしてやりたいの。礼子、お願い。礼子のお楽しみを横取りして悪いんだけど、私にやらせて!」礼子はまじまじと富美代の顔に見入ってしまった。小柄な上に小顔の富美代はすっきりと整った顔立ちだった。整いすぎている、といった感すらある。同じような背格好でも、朝子はどこか子供っぽく愛敬があるのに対し、富美代はどこか冷たい、サイボーグ的な印象のある顔だった。小柄な子特有の気の強さがある富美代が怒るところは礼子もしょっちゅう見ていた。なまじ整った顔だけに、怒ると余計に迫力があった。だが今はいつもとはまったく違う。富美代は本気で怒っていた。私、ふみちゃんとは付き合い長いけど、この子が本気で怒ったとこって初めてみたな。本気で怒ったふみちゃんがどういう風に慎治を苛めるか、見てみたいな。礼子自身も慎治を苛めたいのはやまやまだった。だが、むらむらと沸き起こる好奇心には勝てなかった。

「いいよ、ふみちゃん。慎治はふみちゃんの思い出を穢したんだもんね。今度はふみちゃんが慎治を穢してやる番だよね。どう、みんな、ふみちゃんにやらせてあげていいでしょ!?」礼子の提案に反対がでるはずなかった。「ふみちゃん、頑張って!」「思いっきりやっちゃえ!遠慮なんかいらないからね!!」みんなの声援を受けながら、富美代は死刑執行人のごとく、トレーの前に正座している慎治に歩み寄った。

「慎治、行くわよ・・・」富美代はまず、先ほどの玲子と同じく慎治の弁当をグチャグチャに踏み潰した。ご飯が、おかずの魚のフライやトマトが、ぐちゃぐちゃになり、赤い固まりとなった。「慎治、あんたにはこんなもんじゃ、済まさないわ。」富美代は上履きの底を見ながら呟いた。あんまり、ちゃんとこびりついてこないな。「もうちょっと水気が必要ね。」富美代は慎治の弁当にたっぷりと唾を吐き掛けた。「和枝、悪いけど手伝ってくれる?私のだけじゃ足りないから、和枝も唾かけてくれない?」「うん、いいよ。」何をするのかな?ただ食べさせるだけなら、別に2人掛かりで唾かけなくてもいいような気もするけどな。まあいいや。お手並み拝見。和枝は口中一杯に唾を貯め,慎治の弁当に吐き掛けた。ペッ、、、ベッ、、、二人でやれば作業は早い。富美代と和枝は慎治の弁当の表面をあっという間に唾まみれにした。「OK、サンキュー和枝、この位で水気は十分ね。」

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