GIMICさんの作品「Toy Boy」【7 苦悶】
部屋に入り、ベッドに腰かけると、今日一日の緊張がようやく解けた。紗枝の仕 打ちが腹立たしかった。しかし、こうして一日を振り返ってみると、心のどこかに 「今日は学校に行ってよかった」と思う部分があるのだ。それが中身はともあれ、 紗枝と会話ができたからなのか、それとも別の理由なのかがはっきりしない。でも、一つだけはっきりしていることがあった。それは、紗枝との会話を思い出すと 即座に自分の体が反応を示すことだった。ベッドに腰かけてからまだ数分と経って いないのに、陽一の股間は早くも痛いほど固くなっていた。
しかし、陽一はそれを無視して鞄の中から教科書を出し、宿題に手をつけようと した。しかし、10分経っても20分経っても宿題は1問も解けなかった。問題文 を読んでも単語一つの意味すら頭の中に入って来ないのだ。そして、下着の中がど んどん湿っていく。
だめだ…。集中できない。陽一はズボンの前を開くとペニスを引っ張り出した。
そして、机の引き出しの奥からアイドルの水着の写真を出し、それを眺めながら、 ペニスをしごき始めた。
出すものだけ出してしまえば、勉強に集中できるはずだ…。そう思いながら、陽一はペニスをしごき続けた。しかし、以前のように気持ちが盛り上がらない。ペニスは最初からあれほど勃起していたのに、いくらしごいてもだめだった。それどころか少し固さが失われて来たようにすら感じられる。
陽一にはその理由が本当は分かっていた。でも、認めたくなかった。この写真を見て、早く出してしまうんだ。陽一はさらにペニスをしごき立てた。
しかし、射精できない。もうやめよう。昨日もオナニーしたんだから、そんなに毎日出るわけないよな。そう自分を納得させて、ペニスを下着の中に収める。体の力を抜き、椅子の背に体を預けて天井を眺める。そして、両手を広げ、深呼吸をしてみる。何も考えなければすぐに勃起も収まるに違いない。
しかし、そうはならなかった。広げた両手を体の両側にだらりと下げた時、陽一は無意識にその両手を背中で交差させた。突然、両手が交差したまま動かなくなった。同時にペニスが再び硬度を増し始める。
どくん、どくん…。陽一の鼓動が早くなっていく。天井がまるでスクリーンにでもなったかのようにそこに紗枝の姿が映し出された。紗枝はスクール水着を着ている。どくん、どくん、どくん…。陽一の鼓動はさらに早くなる。股間が痛くなってくる。紗枝の顔が消え、紗枝の足が、そして、その下に隠れながら、彼女の足の裏を無心に舐める自分の姿が浮かぶ。
(ち、ちがうよ。ぼくはそんなことしたくないよ…)
左手は背中に回したまま、右手が陽一の股間に伸びた。右手は手探りでペニスを握り締め、ゆっくりとそれをしごき始めた。「うぅ…」
さっきは何も感じなかったのに、びりびりと快感が走る。
紗枝の足がスローモーションで顎に炸裂する瞬間、トイレの床に落ちた紗枝の唾液を舐める自分の姿、紗枝にペニスを「もっと」踏んでくれと言ってしまった自分、昨日の出来事が次々と浮かぶ。その場面が変わる度に右手は少しずつ早く上下に動いた。
「うっ…くっ…うっ…」
(ち、ちがうよぉ、ぼくはこんなことで気持ちよくなったりしないよぉ…)
どんどん気持ちが高ぶっていくのが分かっていながら、陽一はそう小さく呟かずにはいられなかった。しかし、天井のスクリーンでは目まぐるしく場面が入れ代わり、陽一は意識が遠のいていくような気がした。そして、とうとう射精の衝動が襲って来た。
その時、陽一はふっと我に帰る。
(だめだっ!こんなので感じちゃっ!!)
右手が動きを止める。陽一は体を固くして射精の衝動が去るのを待った。
(ぼくは変態なんかじゃないっ!!)
陽一は映像を再び見ないように目を閉じたが、それで映像が消えるわけはなかった。むしろ、目を閉じたことで昨夜感じたのと同じく、体が記憶している全ての感覚が蘇って来ただけだった。紗枝の足の裏にこびりついていた細かい砂や埃の感触と味、ペニスが彼女の足の裏で圧迫され、よじれる感じ、汚れたトイレの床に落ちた紗枝の唾液がなぜか甘く感じたこと、陽一がそれらを否定しようとした分、むしろ昨夜より詳細な記憶が蘇ってきたようだった。
最後に見えたのは、紗枝がその瞳に好奇心を一杯にたたえながら、「いいわよ、じゃ、イッて見せなさいよ。足で踏まれてイク男のコなんて、みものだわ。…こうすればいいの? アハ」と陽一に話しているシーンだった。
映像の中の陽一と同時に右手の中のペニスが爆発した。
(こんな…うっ…ことしちゃ…くっ…、だめだよぉ…)
精液が陽一の腹から胸、そして顔面にまで飛び散った。陽一はなおも右手を上下に動かしながら、左手でその精液を拭うとわざと乱暴に自分の口の中へと押し込んだ。言うまでもなく、左手は紗枝の足だった。
自らの精液にまみれた左手を舐めつくした頃、陽一はようやく右手の動きを止めた。射精後の気だるさが体を包む。連日のオナニーでありながら、陽一は大量の精液を撒き散らしていた。昨日以前なら、これほど射精すれば、頭はすっきりとし、勉強をする気にもなったのに、今日はそんな気になれない。虚しさだけが残っていた。その理由を陽一は、自分の本意ではない方法でオナニーしたからだと判断していた。しかし、実は違っていたのだ。陽一がその本当の理由に気づくのはまだ当分先の話だった。
のろのろと着衣を整え、ぼんやりとしていた陽一はふと昼間の紗枝の言葉を思い出した。
「メールだっ!」
陽一は急いでパソコンを起動した。そして、メーラーのアイコンをダブルクリックし、メールをチェックする。サーバーに接続するまでの時間が異様に長く感じられた。やがて、メールが1通届いていると表示される。
紗枝からのメールだった。添付ファイルが一つ付いている。取り敢えず、本文を読む。
「今日は、聡美といっしょに変態くんの話ができて楽しかったね。
聡美に送ったのと同じ写真を添付しておきますので、じっくりと見て楽しんでください。あ、さっき、聡美からメールが来てたんだけど、彼女ったら、この変態が誰かを突き止めてやるって張り切ってたよ。陽一君も協力してあげたら?あはは。 じゃ~ね~。」
聡美ちゃんが突き止めるも何も紗枝ちゃんが顔のモザイクを外してしまえばそれ までじゃないか…。ひょっとしたら、もう紗枝ちゃんは聡美ちゃんに何か教えてる かもしれない。そんな事を考えながら、陽一は添付ファイルを開いた。
突然、目の前の17インチモニター一杯に画像が開かれた。陽一はデジカメを 持っていないので全然知らなかったが、最近のデジカメの解像度は少し前のものと は比べ物にならない。それは陽一の想像以上に鮮明だった。トイレの窓には確かに 昼間見たのと同じ光景が広がっている。そして、聡美も思わずじっくり見たという 部分も鮮明だった。陽一はモニターの前で赤面した。顔にかけられたモザイクが唯 一の救いだが、モザイクを外すまでもなく目を細めて眺めるとすぐにでもそれが
自分だと分かるような気がした。
