GIMICさんの作品「Toy Boy」【5 芽生え】
陽一は夕食もそこそこに自室に籠り、今日の出来事を思い返していた。
なんで突然あんなことをしてしまったんだろう。自分がしたことが信じられない思いだった。
紗枝ちゃんに自分の思いを告白しようと思っていたのに。あんな事さえしなければ、今日の大会できっと紗枝ちゃんはぼくのことを見直してくれていたに違いないのに。クラスの英雄になったと思った次の瞬間にこんなことになってしまうなんて…
後悔の念で陽一は泣きだしそうになった。今ごろ、紗枝ちゃんは本当に友人みんなにメールを送っているんだろうか。ぼくのあんな恥ずかしい写真を…。
ぼくが知っているだけでも紗枝ちゃんの友人は多い。もし、本当に友人みんなにあの写真をばらまいたとしたら…。頭の中に、次々とイメージが浮かぶ。陽一に冷たい視線を送るクラスメートの女の子の表情。陽一が横を通るとその背後でひそひそと聞こえるうわさ話。汚物でも見るような女の子の視線。教室の入り口から中をのぞき込む他のクラスの女の子の視線。
そして、黒板に張り出された写真…。
「ああ…」
陽一は部屋の隅に座り込んで頭を抱えた。もう学校へ行けない…。明日にはぼくはもう英雄なんかじゃなくなっている。それどころか、変態なんだ…。
ずきっ。その時、陽一は両腕に痛みを感じた。いや、痛みそのものはさっきから感じてはいたが、意識していなかったのだ。
その両腕の痛みが今日の水泳のせいではなく、両手を後ろ手に長い間拘束していたせいだと気づいた途端、今度は、紗枝と自分とのやり取りやあの情景が浮かんで来た。続いて陽一の五感がふいに過去の記憶を取り戻したように、紗枝に蹴られた顎の鈍い痛み、舌に残る紗枝の足の裏の感触踏みにじられたペニスの痛み、女子トイレの床の冷たさ、紗枝が吐き捨てた唾の味が次々と蘇って来た。
陽一の目から涙がこぼれた。しかし、自分の股間がいつのまにか固く強ばっているのも感じていた。
どうしてこんな時に…。どうなっちゃったんだ、ぼくの体は…。
陽一は頭を抱え込んだまま身じろぎもせずに自分の体の反応をののしった
同じ頃、紗枝は、湯船の中で今日の出来事を振り返っていた。偶然、見てしまったクラスメートの痴態とその後の自分の行動。陽一と同じく紗枝もまた自分の行動がちょっと信じられない思いだった。男の子を足で廊下に押さえつけ、顎を蹴り上げ、そして、大切な部分を思い切り踏みにじった。いくら、陽一の方があんな格好で自分の前に現われたことが発端とは言え、昨日まで、いや、今日あの時まで考えたことすらなかった ことを次々にしてしまったのだ。いや、驚くべきことは、それを 「実行した」ということより、あんなことを「思いついた」ことかもしれ ない。そして、あの時、自分が性的に興奮してしまったこと、それも驚き だった。性的な快感というものは、男女がベッドの中でお互いを優しく愛撫しあって感じるものだと思っていたのに、あんなことをしている時に「感じる」なんて。
あの時の水があふれる感覚を思い出しながら、紗枝は湯船の中でそっとその部分に触れてみた。自分の手で触れても気持ちはいい。恋人に触れられればさらに気持ちがいい。でも、あの時のあの感覚とは明らかに違う。
紗枝はそんな事を考えながら、今日、最後に陽一に言った自分の言葉を思い出した。
どうしようかな。ほんとにメール出しちゃおうか。それとも、当分は私だけのおもちゃにしておこうか。メールを出すにしてもあのコには出せないな。口が軽いし。出すのなら、あのコとあのコ…くらいかな。みんなで陽一君と遊ぶのも楽しそう。
いつしか、「自分が信じられない」という気持ちは紗枝の中から消えていた。これからの陽一とのつきあい方を考えるのが楽しくて仕方がなくなっていたのだ。紗枝の瞳が潤み、頬が上気しているのは、湯船に浸かっているせいだけではなかった。
一方、陽一は部屋の中で全裸になっていた。しかも昼間そうだったように水着で両腕を後ろ手に拘束している。陽一はゆっくりと床に跪いた。彼の前方の床にはすでに一度射精したのか白濁した液体が飛び散った痕が見える。
陽一はそのまま体を折り曲げるとその床の白い痕跡へと舌を伸ばし、ひとつずつきれいに舐めとりはじめた。苦悶とも喜悦ともつかない表情を浮かべ、涙を流しながら。
