GIMICさんの作品「Toy Boy」【3 服従 】
(えっ・・・)陽一はまさかと思ったが自分の後頭部に触れているのはどう考えても紗枝の足だった。
(紗枝ちゃん、なんてことをするんだよぉ)
心の片隅で土下座まですれば紗枝は許してくれるはずだと陽一は思っていたのだが。
なのに、頭を足で踏みつけにするなんて。紗枝に対する怒りが少し沸き起こったが、自分の今の様子を思い浮かべると怒りよりもその情けなさに涙が出そうだった。紗枝の足を払いのけてこのままの姿ででもかまわないから逃げたい。その後のことは逃げてから考えよう。そう決断して紗枝の足から逃れようとした時、陽一の行動を阻むように紗枝の声が廊下に響いた。
「私の言うこと、なんでもきくの?」
質問の形を取ってはいたが、その声の中には明確な意志が込められている。瞬時に陽一は体が動かなくなり、同時に「は、はい。」と躊躇なく答えてしまった自分に驚いた。
「ちゃんと言って。私の言うことなんでもききます、って。あと、きちんとしたお詫びの言葉も聞きたいな」
そして、紗枝は次に自分が思いついたセリフがなんだか可笑しく感じられ、軽く笑いながら言葉の続きを言った。
「自分が変態なばっかりに迷惑かけてごめんなさいって」
自分の笑い声に勇気づけられるかのように、紗枝は陽一の頭部を踏む足に力を込めた。全裸の陽一と一緒にいるところを人に見られたら、自分もどう思われるかわからない。彼女はそんな危惧も忘れて、湧いてくる欲求に身を任せはじめていた。
足元から陽一のか細い声が聞こえてきた。
「は、長谷川さんの言うこと・・なんでも聞き・・ます」
男を足の下にしき、服従の言葉を聞く。紗枝はゾクゾクするような快楽に酔った。(ああ、なんだろう、この感じ…)。はじめて知る支配の快感。もっとも紗枝にはそれがなんなのか、意識的にはわからなかったのだが。
「それから、迷惑かけたことあやまります。で、でも、ぼく変態なんかじゃないです。信じてください、違うんです!」
紗枝が足に力を込めたせいで顔面まで廊下に擦りつけられていた陽一がさらに言い訳を続けようとした時、ふいに頭に加えられていた圧力がなくなった。思わず顔を上げると何かが顎のあたりに炸裂する。紗枝が蹴り上げたのだった。
不意を突かれた陽一は跳ね上がるようにして横向きに倒れこんだ。蹴られた顎と頬がジンジンとする。声を失ったまま、呆然と紗枝の方を見た。
「ああ、本当にイライラする。いいかげんにしなさいよ。まだ、いいわけする気?」
紗枝は半分我を忘れていた。自分の行動に驚きながらも、衝動を止めることができない。男の人を蹴ったのなんておそらく生まれてはじめてだ。ほとんど無意識のうちに出てしまった。しかし、足の甲に残る、陽一を蹴り上げた火照るような感覚。これがさらに紗枝の攻撃性に火をつけた。
横倒れになってしまったために、再び露わになってしまったペニスを隠そうと、陽一が、腕の拘束で動きづらいカラダを惨めによじっていると、紗枝はさっと彼の股間を指差した。
「自分でそんな恥ずかしいかっこして、ここをこんなにしてても変態じゃないっていうわけ?」
陽一はあわてて「ちがう!ぼくにも何でこんな風になるのか分からないんだ!」と叫ぼうとしたがそれはできなかった。紗枝の右足が口を塞ぐように彼の顔面を踏みつけたからだ。陽一の考えなど聞く気がないと示すかのように。状況は完全に紗枝のペースだった。
うっと呻きながら陽一は本能的に紗枝の足から逃れようと頭を振ったが、紗枝は執拗に逃げる陽一の顔面を追いかけた。
「私、この足でプールからここまで歩いてきたの。学校の廊下って汚いわ。なんでも言うこと聞くっていったよね? 舐めて」
「なんでも言うこと聞くっていったよね?」紗枝の言葉が陽一の頭の中で繰り返し響く。紗枝の言うことを聞かないと・・・。陽一の動きが止まる。すかさず紗枝はさらに力を込めて陽一の顔面を踏みつけた。陽一の苦痛に顔をゆがめたがもちろんその表情は紗枝の足に遮られほとんど見えない。
「はやく」
まるで絶対服従の呪文でも唱えられたように陽一は目を閉じたまま口を少し開いた。おずおずと舌の先が紗枝の足の裏、ちょうど土踏まずの辺りに触れる。廊下と同じくらい冷たかった。そして、細かい砂と埃の感触。
なんで足なんか舐めなきゃいけないんだ。やだよぉ。(デモ、サエチャンノアシナンダ、コレハ。)頭で拒否しているはずなのにさらに舌が伸びる。それに合わせるように紗枝は足の力を少し抜いた。陽一の舌が十分に足の裏を舐められるように。
苦いようなしょっぱいような味が広がり、口の中がじゃりじゃりになる。
(うぅ、みじめだ。足の裏なんか舐めさせられるなんて)
(でも、これは紗枝ちゃんの足・・・)
最初はちろりと舐めただけだった。いくら憧れの紗枝のものとは言え、やはり汚れた足の裏である。嫌悪感と屈辱感が陽一を襲う。紗枝はどこまで舐めれば許してくれるだろうか。そんな事を考えながらまたちろりと舌を這わす。
何度舌を伸ばした時だろうか、びくりと陽一の股間でペニスが動いた。また、異質の快感だった。
(えっ?・・早くこの場を逃げ出したいと思っているのに僕は感じている)
新たな快感が大きくなるのに合わせるように陽一の舌は段々と大きく伸びるようになった。いつの間にか陽一は無心に紗枝の足の裏に舌を這わせていた。ぞくぞくするような快感に身を震わせながら。
(犬みたい)。紗枝は足裏を動く、陽一の柔らかな舌の感触を楽しんでいた。女の子の足の下で必死で舌を動かす陽一が哀れで可笑しく、また同時に妙なことに―――可愛らしく思った。すると、大学生の彼に愛撫されているときのようなあの感覚、いや、もしかしたらもっと強い、甘美な情動が体の内に起きてきた。つまり、紗枝は、興奮していたのだ。スクール水着はまだプールの水に濡れていたが、紗枝の柔らかな股間を包む布は、別の「水」にひたされ始めていた。(舐めて、いるからだわ)。紗枝は自分にいいわけをした。陽一と自分の異常な立場について考えることは避けた。(舐めるって性的な行為だもの)。
ほどなく紗枝の足の裏に付着していたものは全て陽一が舐めとってしまった。
陽一は解放される事を期待して紗枝を見上げた。しかし、頭の中には紗枝のもう一方の足が伸びてくるイメージが脳裏に浮かぶ。
「これでいい?は、長谷川さん」
「まだよ」
陽一を服従させる、思い通りに動かす。この行為に夢中になりはじめていた紗枝にとって、これでいい、はずがなかった。
「まだ、陽一くん、全部いうこときいてないでしょ?」
言うか言わぬかのうちに彼女は、顔の上においていた足をさっと動かし、陽一のひくひくと動くペニスをぐっと踏みつけた。大胆な行動には少し勇気が要ったが、興奮が紗枝を後押ししていた。
(あっ!)陽一が息を飲む。体が固まったように動けない。最初に紗枝にそれを見られてしまった時も恥ずかしかった。女の子の言いなりになって汚れた足の裏を舐めるのも十分に屈辱的だった。でも、今、陽一が感じている屈辱感はそれ以上だった。ペニスが男性の象徴だからであろうか。
(さ、紗枝ちゃん。なんてことをするんだよぉ。こんなのいやだ・・・。)
しかし、恥ずかしさと屈辱感とペニスに伝わる紗枝の足裏の感触は、狂おしい快感へと変わろうとしていた。
「自分が変態だって認めてないわ」
硬く、熱い、感覚。足の裏でそれを感じるのは始めてだ。(面白いわ)。紗枝はさらに足に全体重をかけるようにしてそれを陽一の体の中に埋め込んでこの世から消し去ろうとしているかのように力任せに踏みにじった。
紗枝の足の下でペニスが捩れるように歪んで痛みが走った時、それまで体全体にもやもやとまとわりつくような快感だったものが突如として突き上げるような快感に変わり、ペニスへとなだれ込む。陽一は慌てた。
「紗枝ちゃん、やめて!で、でちゃう!」
長谷川さんと呼ぶ事さえ忘れて陽一は叫んでいた。それくらい切羽詰まっていた。陽一は必死で耐えようとしたが、体が自由にならない。ペニスを自ら紗枝の足の裏に押し付けるように腰が勝手に動く。
紗枝はその声と陽一の体の反応を見て軽く足の力を抜いた。
「何が出ちゃうのよ? イキそうなの?」
「違う!で、でも・・・や、やめて・・ください。」
(イキそうだなんて言えないよぉ、でも、あ・・あ・)腰の動きは止まらない。
「何が違うのよ。ちゃんと言いなさいよ」
紗枝は脅すように再び足に力を込める。
(あ、だめだって・・・も、もう。)
「あ、お願いです。や、やめて・・・」
これだけ言うのが精一杯だった。
「じゃあ、変態だって認める? おちんちん踏まれてイキそうなんて変態以外の何者でもないじゃない。認めたらやめてあげる」
「み、認めます、認めるからもうやめて・・・」
(ああ、もうだめだ。がまんできないよぉ。)
「はじめからそう言えばいいのよ」。陽一を屈伏させた満足感に紗枝は薄く笑みを浮かべた。(一応、約束だから勘弁してあげようかな。でも、このまま踏み続けたらどうなるのかしら…本当にイッちゃう?)。
好奇心と足裏のペニスの感触の気持ち良さに紗枝はまだ陽一のペニスから足を下ろさなかった。それどころかもう一度ペニスをぐりっと踏みにじってみた。
「あぅっ、は、はやく・・やめて」
必死で射精の衝動に耐える陽一に快感が情け容赦なく襲いかかる。ほんのわずかに残る理性とプライドが射精を押し止めているのだ。今や突き上げるような快感に耐え続けることだけが唯一の苦痛だった。それ以外の恥ずかしさとか痛みとか屈辱感は全て快感に置き換わっていたのだから。
(気が狂いそうだよぉ。ああ、こんなに恥ずかしいのにどうしてこんなに気持ち良くなっちゃうんだ・・。紗枝ちゃんにはもう変態だと思われてしまったんだからいっそのことこのまま・・・)
理性と欲望のバランスがとうとう崩れ、陽一の中で固く張りつめていた何かがぷつんと切れる。
一方、紗枝は陽一の情けない様子を楽しみながらもそろそろ止めようかと思っていた。
(陽一くんたら、今にも泣き出しそうだもんね。)
「まあいいわ、やめてあげる。」
そう言いながら紗枝が陽一の股間から足を下ろそうとした時、紗枝はもちろんのこと、本人にすら信じられない言葉が陽一の口から漏れた。
「や、やめないで・・・」(あぁ!言ってしまった)
「はぁ?」紗枝は半ば呆れた。
「馬鹿じゃない? 自分の言ってることわかってるの?」
だが、足の下で腰を振って哀れに喘ぐ陽一の様子を見て、それも面白そうだと思った。
「いいわよ、じゃ、イッて見せなさいよ。足で踏まれてイク男のコなんて、みものだわ。…こうすればいいの」
紗枝は陽一を蔑む笑い声を上げながら、そのペニスを力一杯踏みにじった。
その瞬間、理由は全く別だったが紗枝と陽一はともに胸がきゅんと締めつけられるような気がした。
陽一の目に最後に見えたのは紗枝の美しい微笑みだった。
(あぅっ、)
陽一の体がびくっと大きく震え、腰が跳ね上がる。それと同時に紗枝の足の下で爆発しそうな勢いでペニスが膨張した。思わず、紗枝は足にさらに力を込めて陽一の体を廊下に押し付けた。足の下から、白濁した液体がびゅっびゅっと何度も飛び出していく。
一瞬驚いたが、紗枝はその様子を興味深げに眺めた。
(おもしろーい。ほんとにイッちゃったわ、おちんちん踏まれて。)
(あぅっ、うっ、ぼくは・・うっ・・本当に変態になってしまった・・・)
経験したことのない強烈な快感に体を震わせながら陽一の目から涙がこぼれた。
「何泣いてんのよ。こんな事されてイッちゃったくせに。」
紗枝はまだペニスから足を下ろさず、可笑しさに浮かべた笑みを強めながら、もう一度それをぐりっと踏みにじった。
「あぅっ」
「ほら、気持ちいいんでしょ、こういう風にされると」
「あ、あ、もうやめて・・・」
男のコを蹴り、踏みつけ、足の裏を舐めさせた上にペニスを踏みつけにして射精までさせた。粘りつく液体を足の指で弄びながら、水たまりで遊ぶ子供のような無邪気な心地よさ、楽しさを覚えた。 (陽一くんには、もう何をしてもいいんだわ。)
涙を浮かべながら紗枝を見つめる陽一の目を見て紗枝はそう思った。陽一の顔には紗枝の命令に抵抗する意志は全く見えない。それどころか次の命令を待ちわびているようにすら見える。
支配する快感にまたじわっと「水」が溢れるのを紗枝は感じた。
(もっといじめたい。もっと恥ずかしい事させたい。もっといいなりにさせたい。)
精液にまみれた紗枝の足がペニスから離れた。足が向かった先は陽一の口元だった。
「また、汚れたわ。舐めて。」
(男のコって自分の出した精液舐めるのは絶対に嫌がるって誰かに聞いたけど陽一君はどうかな?)
「い、いや・・」
陽一は反射的に目を逸らした。目の前に突きつけられた紗枝の足の指は自分の精液にまみれている。紗枝の足を舐める事にもう抵抗はなくなっていたがこれは別である。
(やっぱりね)
もちろん、陽一が拒否したからといって止めるつもりは紗枝には無かった。いや、むしろその方が楽しいのだ。
「舐めなくちゃダメよ」
紗枝は足の指を陽一の口にねじ込むようにして押し込んだ。
「む、むぅ・・・」
抵抗はそこまでだった。青臭い臭いと粘っこい感触、そして何とも言えないいがらっぽい味が口の中に広がったが、陽一にはそれを舐める以外に選択肢はないのだ。
今までに味わったことのない異質の快感と引き換えに地獄に突き落とされたような絶望感を抱きながら、陽一は紗枝の足の指をしゃぶっていた。
が、その様子を眺めながら、紗枝が考えていたのは次にどうやって楽しむかだった、この偶然手に入ったおもちゃを使って。
物語はまだ始まったばかりだった。
