Hirokiさんの作品 2

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「ほら、早く渡しなさいよ、キャッシュカード。それから通帳と実印は?」

いつもの二人組の前で、私は黒いセカンドバッグのファスナーを開けた。

中には銀行の通帳と実印、そして何枚かのカードが入っている。私の給料が振り込まれる口座のものだ。

「それごとこっちへよこしなさいよ」

彼女たちは今日はセーラー服姿ではない。

はやりのファッションで着飾って、化粧もしっかりキメている。

マニキュアが光る指で私のセカンドバッグを取り上げ、中を調べ始めた。

「ああ、これね。えーと、あ、ちゃんと記帳してきたのね。給料入ってる」

「あたしにも見せて。えーなんだ、これっぽっちなの?」

「ま、教師の安月給じゃこんなもんじゃない?」

「でもこんなの今日一晩で使っちゃうわよ」

ゆがんだ性癖の証拠を山ほど握って私を脅し続ける教え子たちは、ついに私からありったけの金を搾り取ることにしたのだ。

「他に定期預金とかいろいろあるって言ってたわよね、先生?」

「は、はい・・。それはもう一つの通帳に・・」

「あら、それも全額おろして一つにまとめておくようにいったでしょ」

「も、垂オ訳・・ありません・・。ちょっと・・時間が・・」

「何いいわけしてんのよ。逆らう気?」

「い、いえ・・・」

逆らえるはずがなかった。

教師のくせにブルセラショップやSMクラブに出入りしているマゾ男だというだけではなく、教え子の前に性器を露出したり、未成年の少女に淫行を強要した変態教師であるという証拠写真やビデオを数々撮られてしまっている。彼女らがその気になれば、それらの恥を世間に晒すだけでなく、私を懲戒免職にし、刑務所に送り込むことだって可能だろう。

「まあいいわ。あとでお仕置きしてやるから。とにかく先生が持ってる通帳や証券類、クレジットカードまでこれからは全部私たちのものよ。いいわね」

「はい」

「あら、そっけない返事ね。もっと気の利いたこといえないの」

「ぅあああっ」

さっと伸びてきた手でいきなり睾丸を握りつぶされ、私は悲鳴を上げた。少し離れた席に座っていたアベックがこっちを振り返る。

彼女らの前に出るときには、いつでも股間にいたぶりを受けられるよう、両脚を心持ち広げているように命ぜられている。以前は会うたびごとに注意されなくてはできなかったのだが、この頃では無意識のうちにその姿勢をとるようになっていた。

「も、垂オ訳・・ありません・・ど、どうぞご自由にお、お使いください・・ませ」

「あはは・・声が小さいわよ」

「むぉぉっ・・・も、垂オ訳、ありませんっ・・」

にやにや笑いながら握る手に力が入る。激痛が身体を走り冷や汗が出るが、身動きすることは許されない。そして、私が感じているのは苦痛だけではなかった。その証拠が、握られた睾丸のすぐ上ですでに硬直し始めている。

何度も言い方をやり直しさせられ、ようやく手を離されたときには、全身汗でぐっしょりだった。

「マンションの方は処分してきたんでしょうね」

「はい。ご命令通りにしてきました。売却代金は今月中にその口座に振り込まれます」

大学時代から住んでいたマンションは、亡くなった叔父が格安で手配してくれたものだが、バブル期にはかなりの高値がついていたらしい。それももう人手に渡り、家具や電気製品、衣類に至るまで質屋やリサイクルショップに売り払った。私に残されたのは、今背負っているバックパックに入ったわずかな身の回りのものだけだ。

「何?この数字は。・・3415・・・」

「キャッシュカードの暗証番号です。その下がクレジットカードの暗証番号」

「あ、そう。わかったわ。ネットでショッピングするとき、クレジットカードの暗証を聞かれることもあるものねえ」

「そっちのバックも開けて見せなさいよ」

言われて、今は私の唯一の荷物であるバックパックを開く。

「中のもの全部出して見せなさい。検査するわ」

「はい」

こんなところで・・などという疑問を一瞬でも感じることは許されていない。私は衣類や洗面道具などを取りだして二人の足元に並べる。数はそう多くなかった。

「あ、何よこの時計。腕時計ちゃんとあるんでしょ。二つもいらないわ。それからこのネクタイピンとカフスも」

「そ、それは親父の形見で・・」

「ダメよ。質屋へでも行って売ってきなさい。明日お金を受け取るから、ちゃんと取引証ももらっておくのよ。いい?」

「・・は、はい・・」

「あら、不服そうねえ。やっぱり逆らうのかな」

「あ、いえ。とんでもありません・・。あの・・わかりました。おっしゃるとおりにいたします」

睨まれてあわてて声を大きくする。先ほどの痛みがまだ股間に残っていた。

「よしと・・これで先生の全財産は私たちのものってわけね」

「あら、まだ財布が残ってるんじゃないの?ほら、出しなさいよ」

「は、はい」

ズボンのポケットから取りだした財布は、私に残された最後の現金だ。しかし即座に、入っていた紙幣は全て抜き取られる。いつもは一緒に携帯しているカード類は、セカンドバッグに入ってすでに彼女らの手の中だ。残るは数枚の硬貨のみ。

「電車賃にはこれだけあれば十分よね。いいこと、これから先生は千円以上の現金を持つことは禁止よ。もしも何か臨時の収入があっても、すぐに私たちに差しだすこと。いいわね」

「はい。わかりました」

取り上げた紙幣を山分けにし、二人はカクテルの残りを飲み干した。

「どう?私たちみたいな素敵な女子高生に全財産を貢ぐことができて、嬉しいでしょ?」

「は・・はい・・・あの・・女王様方に使っていただけて・・こ、光栄です・・」

「そうそう。そうやってちゃんと答えなきゃダメよ」

「はい」

「ちゃんと言うことを聞いていれば先生の変態趣味をバラすことはないし、たまにはここを虐めて悦ばせてもあげるわ」

「う・・は・・い。ありがとうございます」

股間をポンポンと叩かれ、私は卑屈な返答を続ける。

「それじゃ、これからすぐこのあいだのお店に行ってね。むこうじゃちゃんとわかってるから、すぐに仕事の説明をしてくれると思うわ。住むところもね」

「はい。わかりました」

私は今日から、ある風俗店とその系列のラブホテルに住み込むことになっている。なんでも彼女たちの先輩が勤めている風俗店だそうで、私の仕事は風俗店の掃除とラブホテルの管理の手伝いらしい。給料はわずかなものだが、住み込みの部屋代と食事代がタダになるというので、彼女たちが決めてきた。そしてそのわずかな給料さえ、すべて口座に振り込まれ、彼女たちの手に渡る。

ただし、私は教師を辞めさせられるわけではない。給料を稼がせ、気が向いたら手近にいたぶることもできるわけだから、彼女たちにとって私が教師でいることは都合がいいのだ。だからラブホテルの仕事は夜勤になる。

要するに彼女らは私の全財産を奪うのみならず、朝も夜も働かせ、その報酬全てを差しださせ、生きるための最低限のもの以外は全て搾取するつもりなのだ。

「もしも働き方が悪かったり何か失敗でもしたらどうなるか、わかっているわよね」

「は、はい。一生懸命働きます」

「うふふ・・今日から先生は、毎晩明け方まで、汚れたシーツとかザーメンのたっぷりついたコンドームやティッシュを片づけて働くのね」

「愉快だわ。厳しい指導で有名で、私たちのことさんざんいじめてた先生が、今じゃ命令に絶対服従するだけじゃなくて、全財産を差し出した上、徹夜で働いてまで貢いでくれるなんてね」

「あとは私たちに時々呼び出されて、気晴らしに殴られたり、使いっ走りをやらされたりして生きていくのよ。先生の人生は今後ぜんぶ、私たちのためだけに存在するんだからね」

「あは。ま、私たちが先生に飽きたりしたらまあ別だけど、そうじゃなかったら一生貢がせてあげるから」

「でもさ、先生って定年あるんでしょ。それに病気するかもしれないし。稼げなくなったりしたらもう用はないわね」

「そうねえ。そうしたらあれね、事故に見せかけて電車にでも飛び込んでもらえばいいんじゃない?保険をいっぱいかけといてさ」

「あはは。それいい」

転落と汚辱を指折り数えて読み上げるような仕打ちに、私はほとんど胸がつぶされそうになっている。しかし無邪気に残酷な彼女たちの言葉は、かえって甘く誘うような調べにさえ聞こえてくるのだ。

「あ、ねえねえ、もうこんな時間」

「あーほんとだ。待ち合わせ、6時だったわよねえ」

「そうよ。その前に買い物しなきゃいけないんだから。じゃあね、マゾ先生」

数十分後にはおそらく、私の口座から大量の現金が引き出され、ブランドもののバッグや服、アクセサリーに姿を変えることだろう。

「あ、あの・・これ・・」

私は手に持っていたポリの買い物袋を差しだした。

「何よ」

「い、いつものタバコです。1カートン」

「馬鹿ね。これから夜の街にでかけようってのに、そんなにたくさん渡されたって困るじゃない」

「・・は、はい・・垂オ訳ありません。じゃ、じゃあ・・」

「もう、2つだけよこしなさいよ。あとは今度でいいわ。帰りに寄ってあげるかもしれないから・・ま、夜中過ぎか明け方になると思うけど。ちゃんと働いているのよ」

「はい」

「じゃあね」

「行ってらっしゃいませ」

雑踏の中に消えていく彼女たちに向かって、私はいつまでも深々と頭を下げ続けた。

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