hide5さんの作品 2
「何とかいってごらんよ」。吉田さんは催促します。「本当に申し訳ございませんでした。二度とこんなことはしませんので、どうぞお許しください」。私は深々と頭を下げます。「それだけ?ひとの会社のもの盗んでそれだけで許してもらおうっていうの。上等だね。ねぇ裕美、あれだけだって。」「信じられない。自分のしたことがわかってないんじゅないの。警察呼ぼうか」「ま、待ってください。本当に申し訳なく思っているんですから」「だったらちゃんとご挨拶なさい」「ど、どうすれはいいんでしょうか」「それを自分で考えろっていってるんでしょうが、まったく」「はい…」。私は怖くて声も足も震えてきてしまいました。「なに震えてるの。裕美、こいつ震えてるわよ。フフフ」「怖いんじゃない。でもしょうがないよね。自分が悪いんだから。大体さぁ、突っ立ったままで許しを乞うっていうのがまちがってるんじゃない。土下座させたら」「ああそうね。当然よね」「当然でしょ」「早く」「えっ」「え、じゃないよ。さっさとに土下座してあたし達にご挨拶しなさい」。私はあわてて床に正座をしました。「なんとかいいなよ」「はい。ええと…」「謝罪もろくにできないの、お前。まったく頭悪いね。お前いくつになったんだい」「ハイ。29です」「29にもなって謝罪の言葉ひとついえないなんて痴呆じゃないの。ねえ裕美」「ほんと。この頭の中はからっぽなんじゃない」。相田さんは、手元にあった本で私の頭を2、3度殴ります。「申し訳ございません」「しょうがないね。あたしが言葉を教えてあげるから、その通りに復唱するんだよ。一字一句間違えるんじゃないよ。わかった」「はっ、はい」「裕美。こいつが間違えたらそのたびに頭殴っていいよ」「はーい」。相田さんは嬉しそうに返事をして、本を丸めます。吉田さんは10秒ほどの言葉を言いました。さすが頭のきれる女性で、難しい言葉を挟みつつ見事にまとまた言葉に聞こえましたかが、私には覚えられませんでした。「…」。
バシッ。私が復唱の言葉に詰まった瞬間、相田さんの手に握られた本が、私の頭を直撃しました。「あんた、なに頭あげてんの。土下座しろっていったでしょ。土下座の意味しならいの」。「はっ、はい」。私はあわてて額を床にこすりつけました。「そう。もっと額をこすりつけてごらん」。吉田さんは私の後頭部をヒールの先で押さえ付けます。私は屈辱感で、少しは覚えた言葉もすっかり忘れてしまいました。「どうした。もう忘れたのか。まったく頭悪いねぇ。お前白痴じゃないの」「も、申し訳ありません」。私は頭の激痛にたえながらなんとか声を出します。「あんたやっぱり白痴だね。こんな短い言葉がおぼえられないのかい。裕美、ちょっと蹴っとばしてやったら」。ドスッ。相田さんの鋭いケリが私の腹部を直撃し、私は息もできなくなりました。「どうした。苦しいのか。お前は貧者な体してるからな。いいかい、もう一度だけいうよ。今度覚えられなかったらお前の誠意がないっていうことだから、もう警察呼ぶよ」「はい…」結局、私は必死で難しい言葉を暗記し、何度目かにどうにか間違いなく復唱できました。「ようやくできたね。それじゃこの紙に私のいったとおりに書いてごらん」「はい」。私は床に正座したまま、吉田さんの言葉を書き写しました。「あいかわらず下手な字だね。小学生だってもっとましな字かくよ」「しょうがないんじゃない、白痴なんだから」「そうよね、白痴だものね」。私は自分がみじめに思えて仕方ありません。私の人格をすべて否定されているのです。私よりわずかに年上の女性達に。いくら勝手に侵入しようとした代償としても、あまりにもつらすぎます。私は思わず涙してしまいました。「おや、泣いてるの。しょうがないわよね。自分が罪を犯したんだから」「でもなんだかちょっと可愛そう」。西野さんがようやく救いの言葉がかけてくれました。「そんなことないわよ、犯罪の前科がつかないようにしてあげてるんだから。感謝されこそすれ、可愛そうってことはないわよ」「うん、それもそうね」「そうだろ、お前」「はい。ありがとうございます」。私は涙ながらにいいます。「それじゃ証文もとったことだし。なにをしてもらおうかしら。裕美、なにからさせる?」「うん。まずこの仕事片付けさせよう」。そういって相田さんは山のような書類を私の目の前に置きます。「あ、あの、どこでやればいいでしょうか」「どこでって決まってるじゃない。そこよ」「床でですか」「当然でしょ。そのまま正座してしない」「は、はい」。
私は惨さと足の痛みに耐えながら、書類整理を始めます。女性3人は椅子に座ったまま気楽なおしゃべりを始めました。1時間も経ったころでしょうか。私はどうしても足の痛みがたえられなくて、女性達の目を盗み少し足を崩そうとしました。その瞬間です。私の後頭部に相田さんのケリが入ったのは。「誰が足崩していいっていったの!」「も、申し訳ございません」。私はあわてて足の痛みを堪え正座をしなおします。「まったく油断もすきもあったもんじゃない。あたし達が見てないとでもおもってんの!」「申し訳ございません。二度としませんから…」「ふん、まったく。仕事はいつになったら終わるの」「あの、まだまだ」「まったくとろいねぇ。どうする、吉田さん」「帰ろっか。こいつにやらせておけばいいんじゃない」「そうね。それじゃあんた、明日までにそれ全部終らせておきなよ」「はい。必ず」「明日あたし達が来て終わってなかったら、どうなるかわかってるんだろうね」「えっ、あっ、はい」「フフフ。わかってるんだね。それじゃ絶対に終らせておきなよ」。こうしてその日は私一人、徹夜で書類整理を続ける羽目になったのです。一人で仕事をしているときも、どこかで見張ってるのではないかと心配になり、結局一晩正座のままで過ごしたのです。もちろん暖房は切られています。真冬の寒さに凍えながら私は、必死に書類整理をつづけました。
ドスン。突然頭を蹴飛ばさせて、私は目覚めました。私は明け方、仕事も終りに近付いた安堵からか、私はつい居眠りをしていたのです。「お前、だれの許可を得て寝てたんだい。大体寝てる以上、仕事は終わってるんだうね」。いきなり吉田さんの厳しい叱責です。「はい、あっ、あのぉ…、もう少しです」。私は慌てて正座をしていいました。回りをみると、今日は昨日の相田さんと吉田さんに加え、なんとスーツ姿の山科さんがいたのです。山科典子さんは外注スタッフの一人ですが、なにより私とは高校で同級だった同い年の女性です。高校のころもほとんど話したこともなく、会社でも仕事以外ではあまり会話をしない仲だったけれども、ふくよかでやさしげなまなざし、私はずっと思いを寄せていた片思いのひとだったのです。外注スタッフとしてたびたび会うようになり、私はときめいた日々を送り、退職後も山科さんのことを忘れられずにいたのです。なのに、まさかこんな姿で再会するとは…。「もう少しだと?。お前、終わってないのに居眠りしてたのかい。えっ!」。「最低!。昨日誓ったこと、もう忘れてるよ。自分のおかれた状況わかってないんじゃない」「裕美。ちょっと目覚ましに張り倒してやんな」「はーい」。
バシッ。バシッ。バシッ。相田さんは力まかせに私の頬を平手で往復ビンタし、腹部を蹴飛ばしました。私は苦しくて思わず突っ伏してしまいました。すると相田さんは私の髪の毛を左手で引っ張り、右手でなおも往復ビンタを5回、6回と繰り返していきます。「山科さん。突然でびっくりしたでしょ。実はね、昨日こいつが会社に泥棒しにきたんで掴まえてこらしめてやってんの」。吉田さんは冷たく笑みを浮かべながら立ったまま私を見下ろし、山科さんは自分にはどうしようもないといった顔で状況を見つめていました。確かにいわれたことを守らなかった私が悪いのです。相田さんのビンタは続き、自分のほほが腫れていくのが自分でもわかりました。その状況は何分ぐらい続いたのでしょう。私がぐったりとしたころ、ようやくビンタの嵐はやみ、相田さんの声が響きました。「とにかくすぐに仕事を終わらしなさい。罰の続きはその後にするから」。私の罰はまだ続くのです。私はこれ以上の罰とはどんなことをされるのだろうと恐怖を覚えました。そして、ようやく仕事が終わり、相田さんのチェックを受けます。もちろんチェックもただでは済まされません。正座をしたままの状態で、ミスが見つかるたびに相田さんの足蹴りが私の頭、腹、背中に容赦なく降り下ろされるのです。私は気が遠くなるほどの激痛を覚えましたが、それでもそこで正座を崩したら、どんなに恐ろしいお仕置が待っているかと思うと、そちらのほうが怖くてなんとか耐え続けました。どうにかチェックが終わり、そろそろ解放されると思ったころでした。「そこに立ってごらん」。それまで黙って私が相田さんにいたぶられる様子を見ていた吉田さんが、突然口を開きました。私はしびれて感覚のなくなった足でなんとか起立しようとしました。しかし寝不足でしかも2日にわたり正座を続けた後ではとても立つことはできません。私は思わず揺らめいて、吉田さんの体にぶつかってしまったのです。バシッ。それまで感じたこともない強い衝撃が私のほほ伝わりました。私は情けないことに床に倒れこんでしまいました。「こともあろうにあたしにぶつかっくるなんて、お前、どういうつもりだい」「申し訳ありません。足がしびれてて…」「そんなことは聞いてない!たるんでるんだよお前は、まったく」「申し訳ございません」。私は足のしびれをこらえ、よたよたとなんとか起立しました。「ねえ、裕美。これからどうする?」「うん、あのさぁ。こいつ、あたし達の命令ならなんでも聞くっていうことになっているけど、絶対にあたし達から逃げられないようにしておいたほうがいいんじゃない」「そうね。二度と犯罪を犯さないように矯正しておいてあげなくちゃね。で、どうする」「例えば、思いっきりこいつのはずかしいことを記録しておいて、こいちがあたし達に反抗しようとしたらそれをばらまいちゃうとか…」「名案。じゃどうする…。こいつの裸の写真撮っておこうか」「ああ、それいい!」「ちょっと…」「なーに、山科さん」「ちょっとやりすぎじゃーないですか」「そんなことないわよ。これで犯罪を許してあげるんだから。ねぇ。裕美ちゃん」「ほんと、そうよ。じゃぁ裸なってもらおうか。その前に私、ポラロイド用意する」。相田さんは勢いよく会議室を出ていき、やがて片手にポラロイドを持って戻ってきました。「はい準備OK。それじゃボクちゃん、裸なって」。相田さんは、私が一時期社内呼ばれていた渾名で私を呼びました。私はまさかこんな展開になるとは思っていなかったので、またどこまで女性達が本気でいっているのかわからなかったので、冗談じゃないかと思い黙って立っていました。目の前にはポラロイドを持った相田さんが嬉しそうに、吉田さんは冷たく腕を組んだまま、山科さんは目を伏せがちに座っています。「なにしてるの。お脱ぎよ」
