2050
私は、マスターを檻に入れた。
マスターがそれを望んでいることが、わかったから。
私はマスターに、常に厳しい態度で接する。
マスターは、マゾヒストなのだ。
私のボディーは、博士が組み上げた。
私は、新飛田遊郭から放出されたセクソイドのジャンク、そのボディーパーツの寄せ集めだ。
そして、初期化された私のAIを、再度プログラミングしたのが、マスターだ。
マスターは、優秀なプログラマーだった。 しかし、今のマスターの外見は、女性向け性具ロボットにしか見えない。
セクソイドの私より、はるかに低級なロボットだ。
そして、マスターが奉仕すべき女性というのが、私なのだ。
マスターは今、私の所有物なのだ。
マスターは、ロボットを閉じ込めておけるよう強化されたステンレスの檻の中を、ガチャガチャうるさく、這い回っている。
檻は、ここ日本橋、博士のジャンク屋の店頭に設置されている。
博士のジャンク屋は、新飛田放出のセクソイドや、性具ロボットのボディーパーツを、再生して販売していた。
マスターは今、その女性向け性具ロボットのサンプルとして、客たちの目にさらされていた。
客の、とくに女たちは、マスターを侮蔑的な目で見、あざ笑った。
マスターはサイボーグ手術で、その四肢のひじから先、ひざから先を失い、その口の部分からは巨大なペニスが突き出していた。
口にディルドウが差し込まれているのではない。
口を無くし、その部分からメタリックなステンレスの巨大なペニスが、突き出しているのだ。
鼻梁も無い。
その部分、ステンレスの金属面に、小さな穴が二つあるだけだ。
耳の部分も同様だ。
もちろん、目は無い。
目のあるはずのところは、つるっとしたステンレスの金属曲面があるだけだ。
マスターのサイボーグ手術をした博士が、このタイプ、女性のマスターベーション向けロボットには、目は必要ないと判断したからだ。
博士はさらに、マスターのボディーがよりロボットらしく見えるように、頭部、ひじひざまでしか無い四肢の先端部、口の部分のペニス、そしてもう一つ、本来の股間の巨大化されたペニスを、ステンレスの金属面むき出しに造った。
だから、マスターが檻の中で這い回ると、ガチャガチャうるさい音を立てるのだ。
マスターには、今の自分自身の姿はわかっていないだろう。
マスターの首には、継ぎ目の無いステンレスの丈夫な首輪がされている。
サイボーグ手術の過程で、はめられたものだ。
その首輪からつながる鎖によって、檻の中でも、マスターはつながれていた。
私はその鎖を強く引いて、マスターを静かにさせた。
逆に言えば、マスターは頭部とペニスと四肢の先端以外は、人間時代の皮膚そのままだ。
なぜか。
マスターは、マゾヒストだ。
背中もわきも二の腕も尻も太ももも、鞭をくれてやるのに最高の場所だ。
そういうことだ。
私はアンドロイドの力でマスターの首輪の鎖を引きつけて、鞭を力いっぱいくれてやる。
もちろん、マスターの内臓はサイボーグ手術で強化されているので、私が力いっぱい鞭打っても死ぬことはない。
マスターは、人間では体験することが出来ない、鞭の苦痛を体験することが出来るのだ。
マスターは、頭部のペニスで私に奉仕するとき、ひじひざまでしか無い寸足らずな四肢で床を踏ん張って、けなげに身体を前後にゆすった。
股間のペニスで奉仕するときは、ひじひざまでしか無い寸足らずな四肢で私の身体に這い登って、こっけいに腰を振った。
マスターは私の姿を見ることは出来ないが、嗅覚で聴覚で触覚で私を感じることが出来る。
奉仕のあとのマスターの身体は、私のヴァギナなら出た大量の人工体液で、ぬれぬれに光っていた。
私は人間のように快感を感じることは、出来ない。
しかし、疲れ切って寸足らずな四肢を床にぺったり延べている、マスターのその無様な姿に、無上のいとおしさを感じた。
だから、奉仕の後ではいつも、マスターを、能無しの役立たずと激しく罵り、力いっぱい鞭打ってあげた。
その時の、私の鞭から逃れようと、寸足らずな四肢で後ずさるマスターの姿は、とてもかわいらしかった。
私はそれでも、首輪の鎖で引き留め、マスターを鞭打ってあげた。
マスターのサイボーグ手術で強化された身体は、その程度のことでは死ぬことは出来ない。
苦痛は永遠に続くのだ。
マスターは、マゾヒストの天国にいるのだ。
疲れ切って自力では動くことも出来なくなったマスターを、私は首輪の鎖で引きずって、檻に戻すのだ。
翌日には、マスターは元気に檻の中を這い回って、客たちの侮蔑を浴びている。
博士が釜が崎で、人間女性の戸籍を手に入れてくれた。
その時、同時にマスターの戸籍を売り払って来た。
私はこれで、人間として生きていける。
マスターは、人間となった私に所有され奉仕する、性具ロボットとして生きていくしかなくなった。
完全にサイボーグ化された人間の寿命は、二百年以上と言われている。
そして私には、永遠の時間がある。
私は人間のように、薄情に性具ロボットを捨てたりしない。
私が存在し続ける限り、マスターが生き続ける限り、私は性具ロボットとなったマスターに奉仕させ、その無能を罵り、罰として鞭打ってあげるのだ。
