かさじぞうさんの作品「せい子第2-2話」
やがて、車も人もまったくいない小さな交差点が見えてきた。進行方向の信号が黄色に変わった。せい子が運転する赤いクーペは信号が黄色のうちに軽く通過できるくらいのスピードだったが、せい子は、後方に車がないことを確認すると速度を落とし、黄色にもかかわらず、横断歩道の手前の停止線にクーペを停止させた。停止させた後、信号が赤に変わった。
「『せい子女王様』と呼ばせろだって?・・・・・いいわよ。もし、本当にそれを願っているのなら、今からは私の言うとおりにするのよ、いいわね?・・・じゃあ、膝の上のバッグを後ろのシートへ戻して、今すぐシートベルトを外しなさい!」
せい子は、まるで内に秘めた怒りを抑えながら言うかのように、静かに、ゆっくり言った。
孝一は、せい子の言うとおり、重いバッグを素早く後ろのシートへ戻し、それから自分のシートベルトの金属製のバックルを外した。
孝一が外したシートベルトのバックルを孝一からひったくるかのように奪い取ったせい子は、シートベルトを孝一の身体の前を通し、孝一の胴だけでなく両腕をも拘束するようにして、再びフックにバックルを掛けた。その一連の流れの中で、孝一の身体にせい子の身体が近づき、せい子の香りがした。憧れ続けた本物のせい子の肉感をすぐそばで感じることができた孝一だったが、身体の状況は、まるで両腕と胴を縛られたかのように拘束されたので、両腕の自由も奪われてしまっていた。
せい子は、動けない孝一を確認すると、孝一からは見えないように、運転席側のドアのポケットにこっそりと忍ばせてあった小さなカセットレコーダーを孝一に見せつけるかのようにゆっくりと取り出すと、自由を奪われた孝一の目の前でその録音ボタンを押して録音を止め、少し巻き戻すと、カセットテープを取り出し、グローブボックスからボールペンを取り出して、ペン先でカセットテープの爪を折り、カセットテープをダッシュボードの上に置いた。
この一連の動作を行うせい子の態度は、鬼の首を取ったかのように有無を言わさぬ堂々たるものであった。
信号が赤から青に変わり、せい子はゆっくりとクーペを発進させた。
「・・・・・本当のことを言うとね、在学中からおまえにはマゾ気があるんじゃないかって思ってたのよ・・・・・授業中の私をさっきみたいな、いかにもいじめてほしそうなうつろな目で見つめていたからよ・・・。そう言えば千津先生もそんなふうにおまえを見ていたみたいよ・・・千津先生はいつもおまえのことを、かわいい、無理やり童貞を奪ってそのままペットにしてしまいたいなんて言ってたわ。私も同じだったわ。おまえは私の好みだったし、何とかしておまえを私の所有物にしたいって思っていたの。おまえをたっぷりと、じっくりといじめて、辱めて、弄んで、私の色に調教して、何とか独占したい・・・・おまえの在学中も、おまえが卒業してからも、そんなことばかり考えていたわ・・・結局、何もないまま別れ別れになって今日まで来たけど、こうして再会できて、おまえの方からそんなことを告白して懇願してくるなんて、運命なんてわからないものよね・・・・でも、昨日、おまえの上司からおまえが来るということを聞いて、私は、今日こんなふうになるだろうっていう確信めいた予感はあったのよ・・・・それが本当に現実のものになるなんて・・・・・。わかったわ!おまえからもらった日記は後でゆっくり読ませてもらうから今日はこれからおまえが授業中どんなことを夢想していたのか、もっともっと自白してもらうわ!そして、神聖な私の授業を汚したおまえをゆっくりと、たっぷりとお仕置きよ・・・・弄ばれて辱められて、おまえは憧れの『せい子女王様』に征服されるのよ・・・・フフフフ、覚悟なさい!」
孝一は上半身の自由を奪われたまま、静かな、しかし、逆らうことを許さないような威厳のある口調のせい子の話を、無言で聞いていた。
車が国道に合流する交差点の赤信号で停止すると、せい子は、ダッシュボードの上に置かれていたカセットテープをカーオーディオで再生し始めた。「・・・・はい・・・・先生はさっき」と孝一の声が聞こえ始めると、せい子は、普通ならうるさいと思えるほどのボリュームに上げた。信号が青に変わり、せい子はアクセルを踏み込んだ。
「・・・・はっきり言います!・・・ぼ、僕はせい子先生の奴隷になりたいんです!・・・本気です!」と、ついさっきこの車内で孝一が告白し懇願した言葉が車内に4つあるスピーカーのすべてから聞こえてきた。エアコンを効かせるために車内は閉めきってあるので車の外へは聞こえていないとは思うものの、さっき自分が実際に発した声よりもはるかに大きいことは間違いないボリュームである。時々、どもりながらしゃべっている自分の、しゃべっている内容の恥ずかしさと、いつ窓を開けられるかわからないという不安と、自分の赤裸々な告白や懇願、哀願をありのままに録音されてしまったという事実に対する焦りと今後の不安に拍車をかけるように、せい子は、テープの内容に、時には吹き出し、時にはあざ笑い、時にはあごを上に向けるほどに高笑いしながら本当に楽しそうにカセットテープの再生を繰り返した。
国道を住宅街の外れまで進むと、やがて車は、孝一が卒業し、せい子がこの3月の終わりまで教鞭を振るう、日曜日で誰もいない高校の職員駐車場に入って行った。自分の駐車ブースに車を止めると、せい子は、カーオーディオのボリュームを小さめに落とし、上半身をシートベルトで拘束された孝一の方へ向き直り、孝一の目を覗き込んだ。そして、せい子から何をされても逆らわないという孝一の意思をその目から汲み取ると、自由を奪われたも同然の孝一の股間を、スラックスの上から、両方の手で何度も何度もゆっくりと撫で回しながら、精一杯膨張してくる感触を時間をかけて充分に楽しみ、さらに孝一の唇に自分の唇を重ね、長い時間をかけて弄んだ。
逆らうことを放棄した孝一はもはや「物」と化し、せい子のなすがままに服従した。
やがてゆっくりと孝一の唇から自分の唇を離すと、せい子は孝一の股間を撫で回しながら言った。
「フフフ・・・・『せい子女王様』って呼びたいのね?・・・私のおもちゃになりたいのね?・・・・・じゃあ、これから奴隷採用試験をしてあげるわ!・・・試験会場はこの学校よ。私とおまえが出会った最初の場所、二人の思い出のこの場所よ。そうそう、合格だろうと不合格だろうと、カセットテープは返しませんからね!これは入学願書なんだから、私が何本もダビングして全部永久保存しておくわ!・・・フフフフ・・・私の奴隷になりたいのなら、今日の試験に頑張ることね!」
(せい子第2話・完)
