かさじぞうさんの作品「せい子第5話」
せい子・第5話「奴隷契約書」
せい子は、英会話教室開業の準備を進めているマンションから車で10分ほどの距離にある別のマンションに住んでいた。
呼び出された時間に少しでも遅れた場合に執行されるであろう情け容赦のない一方的なお仕置きを想像しながら孝一は、自分が住む一人暮らしのアパートからせい子のマンションに向かって車を走らせた。
孝一のアパートからそれほど離れていない上に時間的にも余裕があったということもあり、孝一は、指定された時間より15分ほど早くせい子のマンションへ着くことができた。
孝一は、せい子から持って来るように言われたSMグッズのカタログを入れた紙袋と、財布、免許証、それに孝一の実印とその印鑑登録証明書と孝一の戸籍謄本や住民票を入れたセカンドバッグを持って車から降りた。
せい子の部屋はこのマンションの4階にある。
玄関のブザーを押してしばらく待っていると、開きかけた扉の間からせい子が顔を出した。
「こんにちは。よろしくお願いします。これ、カタログです。どうぞ」
せい子は孝一からカタログの入った紙袋を受け取った。
「ありがとう。時間より少し早く来るなんて、いい心掛けね」
せい子は優しい微笑みを浮かべながらおだやかにそう言い、少しの間孝一の目を見つめた後、孝一を中に招き入れて施錠すると、いきなり孝一の顔面にツバを吐きかけ、自分より背の低い孝一の、髪を鷲掴みにして怒鳴るように命じた。
「まだ少し時間があるから、ここにあるヒールやブーツを全部きれいに磨いてなさい!これは私が預かっておくからこっちへよこしなさい!」
せい子は孝一からセカンドバッグをひったくると、奥の部屋に引っ込んでいった。
孝一は、趣味の良い収納ブースの中に並べられたブーツの一足一足にクリームを塗りこみながら丁寧に磨き始めたが、やがて指定の時間になったらしく、せい子から呼ばれた。
「孝一!残りは今日帰る前に磨けばいいから、さっさとこっちへ来な!」
「は、はい女王様・・・・・失礼します!」
呼ばれた部屋へ入る際に一礼し、起こした身体で部屋全体を見渡すと、10畳ほどの広さのその部屋がマゾ男を調教するための部屋だということが一目でわかった。
どうやら普段は小さなソファーセットとスチール製のベッド程度しか配置されていないようだが、今日は、ベッドには皮製の手枷や足枷、そして、テーブルには手錠やぺニス責め具、蝋燭、壁にはいろんな種類のムチ、ロープなどが掛けられていた。
部屋の端の方に置いてある本棚の本に目をやると、それは本ではなく、せい子と再会した際に孝一が自分の想いを伝えるためにせい子に渡したかなりの冊数の日記帳だった。
そして、それ以外には数冊のファイル、カセットテープレコーダー、ビデオカメラ、デジタルカメラが置かれていた。部屋のもう一方の端には鉄製の檻が置かれていた。
この檻の大きさは、立ちあがることなど到底できない、膝立ちなら可能な程度の高さで、かつ、中で人が二人正座をして座ればいっぱいという程度の幅と奥行きしかない、一目で奴隷監禁のためのものとわかる鉄パイプで囲まれた檻だった。
入り口の扉は開かれていたが、錠は一箇所ではなく三箇所も設けてあり、パイプの所々には檻拘の中側に向かって、奴隷を檻の中で拘束するための手枷や足枷がチェーンで無造作に繋いであった。
孝一が呆然と部屋の中を眺め回していると、やがて、右手に房ムチを持った普段着のままのせい子が入ってきた。
せい子は、孝一に近づくと、威厳のある目つきを孝一を見据え、いきなりムチを一振り見舞った。
「さあ、今日はまず私の奴隷としての礼儀や作法も教え込まなきゃいけないんだから、のんびりしている暇なんかないのよ!この部屋に入ったらボケッとしていないでさっさと裸になりなさい!」
畳みかけるようにせい子にそう怒鳴られ、慌ててブリーフまで一気に脱ぎ去った孝一だったが、畏怖している頭とは裏腹にもはや勃起しかけているぺニスをせい子の前で露にしてしまった。
せい子はしゃがむなり、孝一のぺニスに往復ビンタを見舞ってやった。
「何なのこの失礼な態度は!・・・・いいわ!どうせこうだろうと思って変態スケベの孝一のための奴隷コスチュームを準備しておいてあげたから!」
せい子は部屋の端にあったプラスチック製のごみ箱から、まるで汚いものを取り出すかのように親指と人差し指だけを使って何かを掴み出し、孝一に投げ渡した。
「さあ、これが今日からのおまえのコスチュームよ。
これからは裸になったらすぐにこれを身に付けなさい!・・・・
私の前でおまえが身に付けることを許されるのはこれだけよ!・・・・さあ、さっさと履きなさい!」
せい子が孝一に投げ渡した物は、ピンク色のレザー製の貞操帯だった。
孝一は受け取ったそれを急いで下腹部に当て、外れないように左右のストラップを締めた。
「そう、それでいいわ・・・・私のセンスに感謝しなさい、変態のおまえによくお似合いよ・・・・・脱いだ服はもうおまえには必要ない物なんだから、そこの大きなビニール袋に入れてからごみ箱に捨てなさい」
せい子は、これからしばらくの間、孝一の心理を弄ぶつもりだ。
孝一はせい子のマンションから帰る時のことを考えると不安で仕方がなかったが、逆らうことも許されず、せい子に言われたままに自分が身につけてきた衣類を全部まとめてごみ用の透明な大きなビニールに入れ、ごみ箱に捨てた。
この部屋のごみ箱はあまり大きくなかったので、ビニール袋は上半分くらいがはみ出てしまった。
せい子は上から足でビニール袋を踏み付けるようにして押し込めるところまで押し込んだ。
「この地区は明日がゴミの日なの。
後で他のゴミとまとめて集積場へ出しておくわ。
大した量じゃないから私ひとりで持っていけるから、私に任せて・・・・
ただ、おまえが奴隷失格の場合には、廃品としておまえも捨てることになるから、その時は私がまとめたゴミを出した後で、粗大ゴミとして自分で集積場まで歩いて行ってね・・・・
そうそう、首から『粗大ゴミ』って書いたプレートをぶらさげてね・・・・・大丈夫、私に捨てられても外で一晩我慢すれば収集車が迎えに来てくれて地獄へ連れて行ってくれるわよ。
もしかしたら集積場の前を通りかかった物好きな女が捨てられた廃品のおまえが身に付けているピンクの貞操帯を外すかもしれないわよ!・・・・そうだ!慈悲深いどこかのおばさんが退屈しのぎのためにおまえを拾ってくれるかもね!」
「・・・・・」
せい子は自分が想像した場面に時折笑いながら、孝一にそう言い、孝一の表情や反応を楽しみながら、孝一の心理をゆっくりと、じっくりと弄んだ。
着てきた衣類をごみ箱に捨てさせられ、せい子からこれだけ脅かされても、ピンク色の貞操帯はきつく締められた状態の中で精一杯盛り上がっていた。
「・・・・私に捨てられずに済む方法なんて簡単なことよ。おまえが自分というものを捨てて、私の言うとおりにすればいいんだから・・・・私を満足させればいいんだから・・・・・簡単でしょ?」
孝一の前にしゃがんだせい子は、孝一の下腹部を貞操帯の上から撫で回しながら優しい口調でそう話した。
「せい子女王様、私はあなたに満足していただけるのでしたら、どんな辱めだって喜んでお受けします。
あなたの満足が私の満足なんです。どうか、心ゆくまで辱めてください・・・・・」
孝一は震える声でそう言った。
「おまえが今日ここへ来たのは、おまえの本心に素直に従ってのことよね?」
「はい、そうです・・・せい子女王様の奴隷になりたいというのは私の偽らざる本心に間違いありません」
孝一のその言葉を待っていたかのように、せい子は孝一の下腹部を撫でまわすのを止め、立ち上がると、自分より背の低い孝一をやや見下ろすような格好で言った。
「奴隷としての宣誓の前に、契約書にサインしてもらわないとね・・・。
印鑑はさっきセカンドバッグから出して私がもう押しておいたわ・・・・そうそう、ついでに所持品検査もさせてもらったわ」
孝一のセカンドバッグも今日の調教が終了して無事に解放されるまでせい子が預かるのだ。
調教がいつ終わるのかもわからないし、いつ解放されるかもわからない、もしかするとセカンドバッグも捨てられてしまうのではないか、という不安が孝一の頭をよぎった。
孝一の不安をよそに、本棚から一冊のファイルを取ったたせい子は、ソファに腰かけた。
そして、孝一にそのファイルを渡しながら言った。
「ここに正座して、これを声を出して読んで、最後のところにサインしなさい。
一度だけしか読ませないから、読みながらしっかりと覚えるんだよ!」
孝一は、せい子の前に正座し、手渡されたファイルを開け、声を出して読み始めた。
