かさじぞうさんの作品「せい子第7話」
せい子・第7話「尻に顔を埋めて」
せい子の奴隷となった孝一にとって、平日の朝と夜の2回、せい子からのメールが来ていないかどうかを必ず確認することが、欠かすことのできない重要な日課となっていた。
朝、孝一は布団から出るとテレビをつけることよりも、新聞に目を通すことよりも先に、また、夜は勤めを終えてアパートに帰ると、着替えることよりも郵便物をチェックすることよりも先に、とにかく何をするよりもまず真っ先にパソコンを立ち上げ、せい子からのメールの有無とその内容をチェックした。
孝一にとっては自ら望んだ「せい子の奴隷である」という生涯不変の絶対的身分が一般社会に属する社会人としての権利義務よりも優先されるものであり、したがって、せい子からのメールを削除できる権利はなく、メールで求められた行為に対しては絶対服従という義務があった。
孝一は、せい子からのメールがあると、ディスプレイの画面上で目を通すだけでなく、プリントアウトし、せい子の面前で直接命令されている場合と同様に、自然に背筋を伸ばした正座の姿勢となり、印刷したメールを両手で持ち、せい子女王様が奴隷に何をどのように求めているのか、せい子女王様に心から満足していただくにはメールで求められていること以上にどこに配慮を尽くし気を効かせるべきか、といったことを考えながら、時間をかけてメールに目を通した。
せい子からのメールには、いつも命令や指示が記載されているというわけではなく、精神的な意味での絶対的服従を強いることを目的として、具体的な指示や命令のない、孝一を心理的に辱めることを内容としただけのメールも多かった。
しかし、孝一にとって、週末にはせい子からのメールをチェックする必要はなかった。
週末と休日のほとんどは、休日の前日の夜からせい子のマンションにおいて拘束され、調教を施されるのが常であり、連休の場合には昼夜を問わずせい子のなすがままに弄ばれ、その間の孝一の居場所はせい子のマンションの調教部屋の片隅に置かれている鉄パイプで作られた檻の中と決まっていた。
そこでは、休日の最終日の夜遅い時間になってようやく解放されるまで、首輪、手枷、足枷などを使って肉体的に拘束され、たとえ逃げ出そうと思っても、逃げ出すことは不可能だった。
もっとも、天性のマゾ男であることをせい子の調教によって悟らされた孝一に、この調教部屋から逃げ出したいなどという気持ちが芽生えるはずもなかった。
一人暮らしの孝一の生活は、せい子一色に染まりつつあった。
パソコンのディスプレイの壁紙は右手に一本ムチを携えボンテージルックで仁王立ちのせい子の写真になっていて、スクリーンセーバーは、せい子による調教の際に撮影された孝一の惨めな写真が何枚も使われていた。
顔面に隙間無くツバを吐きかけられた正座姿のもの、全裸で吊るされ、うなだれた身体中にムチの跡が残っている写真、せい子のブーツやヒールで下腹部を踏み付けられている写真、せい子のブーツや脚に頬擦りをしている写真、ツバまみれあるいは剃毛された下腹部の元気な写真、せい子の車の運転席のシートに頬擦りしている写真、正面から撮られたオナニー中の写真などに混じって、全裸で縛り上げられ転がされている孝一の顔の上にどっしりと腰を下ろし、孝一の顔面全体をその肉感的なお尻で覆いながらカメラに向かって笑顔でVサインをしているせい子の写真や今まさにツバを吐きかけようと唇をすぼめているせい子の顔面のアップの写真なども使われていた。
また、契約書の条項や宣誓文言が文字として流れるようにもなっていた。
スクリーンセーバーは短時間のうちに次から次へと表示が変わるように設定されていたが、実際にこのような設定をしたのは孝一ではなく、孝一の部屋の合鍵を所持し、孝一の所有者として孝一に断る必要なくいつでも自由に孝一の部屋に出入りすることができる地位にいるせい子によって、孝一の知らない間になされたものだった。
せい子は、画面だけなくサウンドについても、孝一をムチ打つ音やツバを吐きかける時の音、苦痛にもだえる孝一の声、せい子の高笑いの笑い声などを設定していた。
したがって、孝一にとって自分のパソコンを立ち上げるということは、その時点で一般社会から離れることを意味し、自分にとって一番重要なせい子女王様を絶対君主とした女王と奴隷の二人だけで構成された特別な社会の存在の認識を強要され、かつ、そこでは被支配者でしかないという自分の存在意義を思い知らされるという、正常な人間なら屈辱とも思えるような行為だったが、せい子の責めによる被虐の快感から逃げることのできないマゾ男孝一にとっては快感への入り口でもあった。
せい子と孝一のコミュニケーションの手段は、もちろんメールだけではなく携帯電話や一般の電話も使われた。
私立の男子高校の教師を辞めたせい子は、英会話教室の開業に向けての準備に忙しかったが、そこから生じるストレスを解消するため、あるいは疲れを癒すために、平日でも孝一をマンションへ呼び出すことも多かったが、逆に予告もなくせい子が孝一の部屋を訪れることもあった。
アパートへ行くということを事前に電話やメールで予告された場合には、孝一は仕事の時間をやりくりし、極力時間を裂いて部屋にいるようにした。
ドアが開けられた際にいつでもあいさつがてきるようにと、孝一はせい子から指定された時間にかなり余裕を持って、ドアのところで正座をして待つように心掛けていた。
大抵の場合せい子は用件や目的は告げず、時間だけしか告げてこなかった。
孝一の部屋へ来たせい子は、その時の気分や目的によって、勢い良くドアを開けるやいなや、正座の姿勢で待っていた孝一にスパンキングの雨を降らせたり、履いているハイヒールで思い切り蹴飛ばしたり踏み付けたり、ツバを吐きかけて激高した口調で罵倒したり、孝一の顔面にタイトスカートで包まれた豊満なお尻を押しつけたり、あるいは無言のまますぐに帰ってしまうということもあれば、せい子が来てくれたことに対する孝一の感謝のあいさつを聞き、部屋へ上がり、孝一によるもてなしが終わった後、じっくり時間をかけて孝一を辱め、弄ぶことでストレスを解消することもあった。
