かさじぞうさんの作品「せい子最終話-1」
孝一は拘束された身体で5人のやりとりをぼんやりと聞いていた。
『せい子女王様は第三者の前ではふたりの関係や自分の秘密は隠していてくれるだろう』などという何の根拠もない思い込みを持っていた孝一は、早くも自分の性癖と醜態を暴露され、これから先せい子を除く4人にどう接していけばいいのかわからなくなっていた。
4人とはつい数時間前まではお互い平等な立場に立つごく普通の人間同士だったのだ。
それがこの数時間で孝一のみがその本性と秘密を暴露され、奈落の底に突き落とされてしまい、今後はもう永久に彼女らとは平等に口を聞くことすらできなくなってしまったのだ。
しかも、彼女たちは全員、せい子が見込んだ筋金入りのサディストである。
せい子は孝一をレンタルすることも考えていると言っていた・・・ということは一人ひとりに専属奴隷が見つかるまでは自分が4人の獲物にされるのだろうか・・・・
自分はせい子女王様だけの奴隷でいたい、しかし、せい子女王様の命令には絶対服従しなければならないし、貸与は奴隷契約書にも明記されていたことだ・・・自ら望んだこととはいえ、この先自分はいったい何人の女性サディストに巡り会い、何人の女性サディストの加虐心を満足させることを強いられるのだろうか・・・・などということを漠然と考えていた。
そんな孝一の思考とは裏腹に孝一の下腹部はいつ何時でも正直だった。
孝一の短小仮性包けいの情けないぺニスはサディスト講師陣の話を聞いているだけで先端から液漏れし始めるほどの膨張を続け、短小ながらも精いっぱいその存在と加虐による快感をアピールしていた。
大きなテーブルでは女王様論議がまだまだ止まるところを知らずに続けられていた。
「学生時代を振り返ってみると『ああ、こいつは絶対にマゾだ』って言えるような男ってたくさんいたわよね」
「普段は偉そうに威張っているくせに、ちょっとこっちが声を荒げると急に目を潤ませて必要以上にへりくだってくるやつっていたわよね!」
「『どうするんだよ!』なんて威勢良く言っていたやつがいきなり『申し訳ありません、どうかお許しください!』なんてね」
「そこまでへりくだる必要なんてないのに急に土下座したりしてね」
「土下座してても目だけは上目使いで女性の脚を見ていたりするんだよね!」
「どうしようもないスケベマゾっているわよね!」
「街を歩いていて脚やお尻に視線を感じることってよくあるわ!」
「落とした物を拾おうとしてしゃがんだ途端、スカートで強調されたお尻に視線が集中してきたりして・・・・」
「そういうヤツって、きっと幼い頃からマゾだったんでしょうねえ」
「そんなやつらの幼児体験を聞いてみたいわね!」
「今度、ひとり捕まえて来てここで縛りあげて全部白状させてみましょうか?・・・ひとつ残らず白状するまで責めて責めて責めまくるの!」
「でもマゾ男だったら、かえってそれで気持ち良くなってなかなか白状しようとしなくなるんじゃないの?」
そんなやりとりを聞いていた孝一は、ふと、自分がいつマゾに目覚めたのか、この快感に憧れるようになったきっかけは何だったのか、といった自分のマゾ歴を、縛られて身動きの取れない身体で思い出してみた。
孝一が被虐の悦びに目覚めたのは、まだ小学生の頃だった。
テレビ番組で正義のヒーローが女性悪役に捕われ、十字架に張り付けにされ、何とか解いて逃げ出そうともがいているヒーローの面前で腰に手を当て仁王立ちになって、悪あがきを続けているヒーローをじっくりと罵り、高笑いを続ける女性悪役のその姿に震えるほどの快感を感じたことが最初の被虐の悦びだった。
女性悪役から責められるヒーローを自分に置き換え、そうすることによって自分が責められているかのような快感に浸っていたと同時に、女性の高笑いやふっくらとして赤く冷たい金属的な光を放つその唇、膝の上まであるような黒いレザーのブーツ、そして「八つ裂き」とか「張り付け」、あるいは「拘束」とか「監禁」といった単語に興奮を覚えるようになったのもこの頃だった。
孝一は、テレビのヒーロー物やアニメ、そして現実の世界では担任の先生や教育実習生、親戚のおばさんや近所に住むお姉さん、女医や看護婦、いつも通学途中ですれ違う女子中学生や女子高生といった年上の女性を対象にして、自分で自分のぺニスや陰のうををいじり回し、撫で回しながら、自分が十字架に張り付けにされ、あるいは縛り上げられて天井から吊るされ、もしくはベッドに縛りつけられた形で、女性の高笑いが部屋じゅうに響き渡る中で、支配され、弄ばれることを常に夢想しながら毎日を過ごしていた。
しかし、自分のそのような性癖を「マゾヒスト」ということ、自分が一日に何度も何度も繰り返し行っている自分を慰める行為が「オナニ―」と呼ばれる自慰行為であること、そして、この世に「SM」という魅惑の世界があるなどといううことは知る由もなかった。
小学校高学年になって間もない頃、孝一は、ある日、自分の生涯を方向付けるような被虐的快感に心身とも浸るという体験に出くわした。
それは、地区の子供会で出かけたハイキングでの出来事だった。
子供たちは引率した母親たちが見守る中、みんなであるゲームをしていた。
そのゲームとは、口元に針金製のフックを付けた厚紙で作った魚の絵を、糸の先端に針金製の釣針をつけた手作りの竿を使って、一チーム5人が順番に一匹ずつ釣り上げ、一番先に5匹釣り上げたチームが勝ちというルールのゲームだった。
チームは全部で6チームあり、孝一はその中のあるチームのリーダーとして、チームの5人のトップとして一番最初に参加した。
6人がいっせいに釣竿を揺らし、釣針を魚の口のフックに引っ掛けようとそれぞれが微妙に釣針の動きを調整しながら釣竿を動かしていた。
器用な者は瞬時にして釣り上げ、次の者に釣竿をバトンタッチしていく。
器用な者ほど素早くはないものの不器用な者でも何回かの失敗の後、何とかタイミングを掴んでフックを釣針を引っ掛けて次から次へと釣り上げていく。
気が付くと孝一以外の5チームは全て一番最初の者はすでに魚を釣り上げ二番めの者に、早いチームでは三番めの者にバトンタッチしているチームもあった。
孝一はまだ釣り上げられないでいた。
そんな孝一に対するチームの応援がやがて野次やイライラから生じた罵倒に変わっていった。
「いつまでかかってんだよ!」
「早くしろよ!」
孝一は焦った。
しかし、焦れば焦るほど手元が震えておぼつかない・・・・。
中腰の姿勢で釣竿を操作していた孝一は、フックに針を引っ掛けられない焦りから、できるだけ低い姿勢で針の動きを微調整しようと考え、両膝を地面に付けての膝立ちのような姿勢に変えた・・・・しかし、思うように引っ掛けることができず、ただでさえ焦りまくっている孝一はさらに焦った。
「フフフフ・・・・孝一君はひとりで楽しんでいるのね・・・・・。
いったいいつまで楽しむつもり?」
孝一はそう言われて、膝まづいた姿勢からふと顔を上げた。
そこには、引率者として来ている友人の若い母親の顔があった。
その女性は、大柄でふっくらとした体型ではあったが胸と尻のボリュームは豊満で重量感があり、足元こそスニ―カーではあったものの、両足を開き気味に、両手を腰に当てた仁王立ちの姿勢で孝一を見下ろしていた。
言葉を発し、笑顔を構成している顔面の一部分である唇は少し厚めであったが、やわらかそうな下唇は艶やかな光を放ち、その妖艶さは幼い孝一の目を釘付けにした。
情け容赦無く孝一を見下ろすその目は、まるで射止めた獲物を弄ぶかのように冷酷な光を放っていた。
仁王立ちの大柄な女性に見下ろされた孝一は、ただでさえ小柄な身体が、追い詰められた獲物のごとくさらに小さく見えた。
「あらあら・・・・震えてるわよ・・・いったい何をしているの・・・」女性の唇を見上げていた時にからかい半分にそのような言葉を浴びせかけられた瞬間、例えようのない快感が孝一の全身を走り抜けた。
あえて例えるとすると、その快感は毎日何度も何度も繰り返していたオナニ―の射精による快感と同じような種類の快感だった。
「ああ・・・・この女の人からもっと罵られたい・・・ずっとこうしていたい・・・この姿勢のまま何度も何度もツバを吐きかけられたい・・・この女の人の足元に平伏して、その脚で頭を地面に押しつけられたい・・・・」
孝一は自分を罵倒した女性の足元から顔までを見上げ、こう思った。
この体験をきっかけとして孝一は被虐の快感を実感のものとして目覚め、四六時中、女性からいじめられ、辱められ、弄ばれ、おもちゃにされることにさらなる強い憧れを抱くようになった。
夢想を繰り返しながらの自慰の回数がそれまでよりもはるかに多くなっていった。
